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【明日へのフォーカス】高畑昭男 麻生さん、若者を救って
「大恐慌以来」の悪夢が世界を吹き荒れる中、日本でも年収200万円以下の給与所得者が1000万人を超えた。高学歴ワーキングプアの問題も深刻だ。大学院で修士を取ったのに定職が見つからない若い知人が「閉店時刻の30分前に駅前スーパーに通うのが日課なんです」と嘆いた。賞味期限の関係で、閉店間際にパック弁当やスシが格安になるからだ。日中は日雇いのバイトで身を削り、疲れ果てた体で深夜のスーパーにとぼとぼと足を運ぶ。親から授かった体格は堂々としているのに、顔色がいつも不健康そうに見えるのはそんな食事ばかりだからだろう。
生活を支える定職を得られない若者たちにガールフレンド、ボーイフレンドはもちろん、家庭を持つ夢も開けるはずがない。彼ら、彼女らは、一部を除いてみな「仕事をしたい」という。勤労意欲がないのではない。情熱も意欲もある。本当に仕事がないのだ。
「国家が何をしてくれるかを問うのでなく、諸君が国のために何ができるかを問いたまえ」と呼びかけたのは、ケネディ米大統領の就任演説だった。だが、今の日本の若者たちの心情はむしろ第二次大戦でチャーチル英首相が訴えた「われに武器を与えよ、さらば戦わん」に近い。戦争をするという意味ではない。「道具や機会を与えてくれれば喜んで働く」という気概にあふれているのに、それができないということだ。
就職難世代の大半は、90年代のいわゆる「就職氷河期」に大学を卒業した世代だ。「フリーター」や「ニート」と呼ばれる世代も、この氷河期とどこかしらで関係があるといわれている。
日本のバブルがはじけたあの時期、業績悪化や企業防衛のために企業が求人を大幅に減らしたのはやむを得ないにしても、氷河期が生じた原因は日本社会の構造的問題だ。彼ら、彼女らにはほとんど何の罪も責任もない。だとすれば彼らを救い、希望を与えるのは政府の重要な使命でもある。
ケネディ大統領は「平和部隊」を創設し、途上国の開発支援に若者を動員した。大恐慌時代のルーズベルト大統領は「恐れることそのものが問題だ」と恐怖心の克服を訴えた。テネシー川流域開発公社(TVA)を創設して世界初の総合地域開発に取り組み、失業者救済にも大いに役立てた。
今の時代、「ダムを造れ」などとは決していわないが、政府が率先して情熱を示せば、若い世代に大きな希望と夢を与えることができる。麻生太郎政権が景気対策や財政出動を考えるなら、若い世代を最優先ターゲットにした多角的な雇用創出、雇用支援策を打ち出してほしい。1年前の自民党総裁選で、アキバのオタクたちが麻生氏に期待した理由も、実はそこにあったのではないか。
氷河期世代の多くは今、30代半ばの年齢だ。今から10年後を想像してほしい。企業でも官庁でも働き盛りの中堅層となる40代半ば世代に、ぽっかりと「職歴もない、経験もない」人々の真空の層が生まれる。日本社会にそんないびつな人口構造を生み出してしまっていいのだろうか。そうなれば、年金制度も未来は暗い。消費税アップも難しく、高齢者医療制度の財源だって危うくなる。少子化もさらに加速するのではないか。
氷河期世代の救済はあらゆる問題につながっている。年金や医療など、今の国会や政治の争点はお年寄りの問題に偏りすぎているように見える。日本の未来を真剣に考えるなら、若い世代を忘れてはならない。(編集委員)