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【グローバルインタビュー】有事でも金の価値は減らない ジィル・レイランド氏
ロンドンの金現物相場が2008年冒頭から、史上最高値を更新している。旧ソ連軍がアフガニスタンに侵攻した直後の1980年以来の高騰ぶりだ。世界の金採掘企業でつくる「ワールド・ゴールド・カウンシル」(本部・ロンドン)の経済顧問、ジィル・レイランド女史は産経新聞の電話取材に対し、「ドル安懸念、インフレ対策などのため金買いが殺到、新興国インドの中産階級も装飾品として金を買っている」と背景を語った。(ロンドン 木村正人)
−−ロンドンの金現物相場が1月3日午前、昨年の平均価格(1トロイオンス=631ドル)を37%上回って史上最高値の同865・35ドルを記録。8日午後にも同873・50ドルと記録を更新した
「金高騰の要因として、短期的なものと長期的なものの組み合わせを指摘できるだろう。短期的な要素としては、金融危機、インフレを引き起こす恐れがある原油価格の高騰、そして明らかに米ドル相場の脆弱(ぜいじゃく)さがある。インフレ懸念は原油価格の高騰に由来するだけでなく、追加利下げ観測が強まっていることも影響している。金はインフレに対する資金防御策とみられている」
−−長期的な要因とは
「基本的には金の需給関係だ。まず金の供給が限られていることが挙げられる。ここ数年、金の産出量は少しずつ減っている。多くの人は産出量は少し回復すると考えているが、ごくわずかにとどまるだろう。金鉱脈の発見は少なかった。2、3年前にわずかな調査しか行われず、調査と鉱脈発見の間には長い時間のズレがある。他の要素としては燃料と鉄鋼価格の上昇などで金の採掘コストがかさみ、金の価格を押し上げている」
−−金を大量に保有する中央銀行の動向は?
「1971年に米国がドルと金の交換停止を宣言し、ブレトン・ウッズ体制が崩壊した際、各中央銀行には大量の金が残された。恐らく、いくつかの中央銀行は金の保有量が多過ぎると感じている。欧州の中央銀行による金の売却量の上限を定めた『金の売却と貸し出しに関する協定』に基づき、中央銀行の売却は抑制されている。すべての中央銀行ではないが、大部分は何年もの間売りに回っている。しかし、この2、3年、中央銀行の金売却量は協定の上限に達していない。協定は、秩序と一定の透明性を保っており、中央銀行の金が一度に売りに出されることはないだろう」
−−金現物相場は持続可能か
「持続可能だ。基本的にとても強い流れがある。金の供給面についてはすでに触れたが、需要についても話す必要がある。現在、金の使い道の約3分の2は装飾品だ。今、最大の市場は経済成長著しいインドだ。そして、米国、中国、中東の購買意欲もとても強い。新興国は豊かになっている。と同時に、販売促進の努力も効果的に機能している。都会的な洗練された市場では、伝統的な金装飾品ではなく、より現代的にデザインされたブランドものが求められる。こうした斬新な金装飾品を作り、効果的に販売する努力が払われている」
−−金高騰の他の要因は?
「どんな有事の際も金の価値が減じることはない。だから金は安全な避難所とみなされている。1990年代の機関投資家は保有株を売却しない限り金は買わなかった。この10年間で状況は一変した。経済面、金融面、政治面の背景から金はドル相場下落やインフレに対する防御策としてだけではなく、多様な投資対象のひとつとみなされるようになった。最も重要な点は、金上場投資信託(EFT)市場が整備され、金購入が容易になったことだ。金現物の購入が法的に認められていない多くの年金基金も金EFTを投資対象に加えることができるようになった。これは非常に成功を収めている」
金現物相場
世界主要市場の中で金現物価格の指標となっているのがロンドン市場。毎日午前10時半と午後3時の2回、5大貴金属商が売買注文を付き合わせ取引価格を決めている。以前はロスチャイルド社の「黄金の間」で行われていたが、同社が撤退した現在は1年ごとの各社持ち回り開催で、電話会議のときもあるという。
英紙フィナンシャル・タイムズによると、大手投資銀行の専門家は今年、金現物相場は1トロイオンス=750〜900ドルで推移し、2015年には同1420ドルまで上昇すると予測する。
旧ソ連軍のアフガン侵攻後、中東は不安定化し原油価格が高騰、米景気悪化への懸念からドル相場が急落した。金はインフレに強く、ドル相場と逆行しやすいため資金逃避先として買いが殺到、相場は5週間で同400ドルから同850ドル(1980年1月21日)まで高騰したが、同年後半には同300ドルに急落した。