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【やばいぞ日本】第3部 心棒を欠いている(9) (1/2ページ)
■ハブ港は中韓に奪われた
下の写真をみていただきたい。広大な貨物置き場には肝心の貨物がほとんどない。着岸している船も少ない。
これは北九州市や国などが、「北東アジアのハブ(中継)港」を目指して約900億円を投じて、2年半前に建設した最新鋭の「ひびきコンテナターミナル」(HCT)でほぼ毎日みられる光景だ。日本海側で唯一、大型貨物船の入港が可能な水深15メートル、長さ約700メートルの岸壁を持ち、3基の巨大クレーンがそびえ立っている。が、開港1年目の貨物取扱量はコンテナ換算で10万個を予想したものの、約6000個にとどまった。
これに対して、対照的なのは約200キロメートル先対岸の韓国・釜山港だ。大型コンテナ船が頻繁に行き交い、活気をみせる。釜山港が取り扱うコンテナの約半数は、世界中から集まる積み替えコンテナだ。
国土交通省によれば、日本発着のコンテナ貨物のうち、アジア主要港で積み替えられて海外に輸出されたり、逆に海外からそんな港を経て日本に運ばれるコンテナ貨物の割合は1993年、2・1%にすぎなかった。
それが2003年には15・5%に上昇した。北米における現地生産比率が3割を超える日本の自動車生産向け部品も、釜山経由で米国などに運ばれる。
残念なことに、日本は欧米とアジアとを結ぶ主要航路便からはずれている。
世界のコンテナ取扱量(2006年)の1位から6位までを占めるのはアジアの主要港だ。日本の最高は東京の23位。東京、横浜、大阪などの主要港の取扱量を足しても世界1位のシンガポール、2位・香港、3位・上海にとても及ばない。
なぜこうなったか。中韓などアジアのライバル港が巨額の資金を投じて大規模化を急ピッチで進めた一方で、日本がそうしなかった結果である。
北九州市港湾空港局の片山憲一局長は「いまの日本に中韓の政策決定のスピードはまねできない」と唇をかみしめる。
貨物輸送の集積基地であるハブ港になれば、寄港する船が増え、自国を発着地としない貨物が数多く集積される。これによって、岸壁使用料などの料金を海外から獲得できるうえ、地元の就業拡大にもつながる。シンガポールや韓国などはハブ港戦略を明確に打ち出して国内1、2港に絞って投資した。
これに対し、日本はこれまでに全国六十数カ所のコンテナ港を整備してきたが、いずれかを選択し、投資を集中してこなかった。「近隣港の間では貨物を取り合うが、協力や連携はない」(企業の物流担当者)という。
地方自治体の港湾政策の問題も大きい。港湾法の下、建設と港湾経営の主体は自治体だ。だが、そこは政治家や建設業者らが結びつく公共事業のバラマキ投資の温床でもある。
さらに港湾労働者らの権利意識の強さやおかしな労働慣行も阻害要因だ。
港湾運営の民営委託で「24時間365日稼働」「日本一安い経費」を標榜(ひようぼう)したHCTも例外ではなかった。港湾労働者らでつくる組合が労働条件悪化に加え、HCTが開港することで周辺港に集まる貨物が減少し、「雇用の安定が脅かされる」と、港で抗議集会などを行った。
ある北九州市関係者は「暴力団につながる『口入れ屋』からも、圧力があった」と打ち明ける。北九州市は結局、一定量の貨物がHCTに集まるようになれば、周辺の港湾労働者らに協力を求めることにした。
これらは港湾コストの高さや手続きの煩雑さに結びつく。
コンテナ1個を運ぶ総料金を比べると、東京港を100とした場合、釜山港は64、台湾・高雄港は65だ。入港から行政手続きを経て貨物を引き渡すまでにかかる時間も、シンガポールが24時間以内なのに対し、日本の港は2、3日かかる。
こうした旧弊によって、日本の港が凋落(ちょうらく)しているだけではない。国際競争力が低下し、国民の生活に影響を与えていることが問題なのである。



