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サントリー、45年目で悲願の3位 値上げ先送りなど追い風
ビール事業の本格発足から45年、「万年4位」と言われたサントリーが悲願の業界3位の座を獲得した。高級ビールなどのブランド定着に加え、上位3社の値上げに対抗した缶ビールの価格維持に、食品値上げの圧迫を懸念する消費者が敏感に反応したことが、大きな追い風となった。
上位3社が原料価格の高騰で値上げするなか、サントリーは4月の値上げを業務用と瓶にとどめ、缶ビール類は今年9月まで先送りした。その結果、キリン、アサヒ、サッポロの販売量は伸び悩んだ。一方、サントリーは1〜3月ビール類出荷でシェアを12.8%まで拡大。第3位だったサッポロを、平成19年の1.5ポイント差から0.5ポイント差まで追いつめた。
サントリーのビール事業は、これまで一度も黒字転換していない。そのため、業界では何度かビール事業からの撤退もとりざたされたほどだ。こうした厳しい環境下で事業を継続し、今回も価格維持に踏み切れたのは、ビールの赤字分を穴埋めして余りある「総合飲料メーカー」だからだ。
昨年のビール事業売上高は2252億円で、全社の15%にとどまるが、成長が著しい清涼飲料や健康食品が寄与し、19年12月期連結決算では5期ぶりに全社の売上高でアサヒビールを抜き業界2位となっている。
非上場で、経営判断に柔軟性が出せる点でも有利で、筆頭株主の米系投資ファンドに買収を提案され、苦慮するサッポロとは対照的だ。
ビール事業を長年後押ししてきた佐治信忠社長は社員に「むりに(ビールの)黒字化を追うな。ブランド育成とシェア拡大の方が重要だ」と説き続けた。このトップ判断が値上げ先送りという思い切った戦略も生んだ。
ブランド育成の成功例が、17年から3年連続「モンドセレクション」ビール部門最高金賞受賞の高級ビール「ザ・プレミアム・モルツ」と、昨年投入した第3のビール「金麦」。
ふだんは価格重視で発泡酒類を買う消費者が、特別な機会に高級ビールを選ぶという「飲み分け」行動と販売戦略が見事に一致した。営業を強化した百貨店の贈答品、さらに飲食店でもプレミアムの採用が増えている。今夏の商戦次第では、21年12月期を目標としていたビール事業の黒字化も「年内実現が見えた」と同社では勢いづいている。
だが、楽観はできない。サッポロも、先月、第3のビールの自信作「麦とホップ」をテコに、全力で巻き返しを図っている。上位2社のトップ争いのあおりで顧客を失う可能性もある。
年間を通じて第3位を保つには、夏の商戦でさらにサントリー製ビールを消費者に印象づけ、9月の価格改訂時に売り上げの落ち込みを最小限にとどめる必要がある。これに失敗すれば、「“瞬間風速”の逆転劇」に終わる可能性も指摘されている。
(山田桂子)

