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【わが道わが友】新日本製鉄名誉会長 今井敬(いまい・たかし)氏(5)
■酒を楽しみ小唄でリフレッシュ
健康の極意を問われれば、食べたいだけ食べ、飲みたいだけ飲むことだ。若いころはひと晩で1升を飲んだが、今は1合ほど。日本酒党で、地方に行くと、その土地のよい吟醸酒を飲むのが楽しみだ。だいたいの銘柄は知っている。
最近は、ワインも楽しんでいる。社長時代、新日鉄が文化施設として建てた紀尾井ホールにワインセラーをおき、外国駐在員の力を借り、接待用のワインを集めた。だが、副社長らにすべて飲まれてしまった。仕方がないので自費で取り寄せ、年に1、2回、資本市場振興財団理事長の保田博氏や北村汎(ひろし)元駐英大使らワイン通と、持ちまわりで品評会を開いている。
リフレッシュ方法といえば小唄。私の先代にあたる当時の斎裕(ひろし)社長から、誘われた。すでに1年前に入門していた当時の佐々木喜朗副社長に連れられ、入門料にあたる「束脩(そくしゅう)」を納めた。小唄は芝居が織り込まれ、日本の伝統文化が凝縮されている。けいこは、月に4回、15分ほど。身辺警護がついた経団連会長時代も、月に1回は決意して時間をつくり出かけた。弟子入りして約20年。今は年に3、4回ほど舞台にも立つ。
旧制中学(東京府立一中)の同期生6人の集いも25年間ほど続いている。日本原子力発電参与の下山俊次氏、トヨタ自動車の豊田達郎氏、自民党の津島雄二氏、元通産省基礎産業局長の真野温氏。一番の現役は、新生銀行の取締役会長に再就任する八城政基(まさもと)氏だ。
彼らと集まると、やはりテーマは経済のことになる。最近は、米国を中心とした金融資本主義の行き先はどうもよくないと話している。1990年代の初めから、世界各地で、資金の動きが実体経済の景気を左右するようになった。米国の低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)問題はまだ続く。金融は、資金を集めて企業の資金需要を助けるという、本来あるべき媒介機能をもう一度見つめ直すべきだ。
日本は平成14年ごろから5年間ぐらい、輸出と設備投資で成長してきた。その間、新日鉄社長を務めた三村明夫会長は、歴代社長の中で最も運が良かったといえる。グローバル化では大変苦労をしたが、過去最高の業績を更新し続けた。一方、今年4月に登板した宗岡正二社長を取り巻く環境は厳しい。新興国の成長は続くだろうが、中国の伸長は鈍り、米国の打撃は極めて大きい。
人口減少期に入った日本で生産を増やすには、移民受け入れなどが必要になる。しかし、日本の鉄鋼業はそれより、資本や技術を世界の伸びゆく市場に投入し、利益を稼ぐグローバル化の時代に入ったのではないか。新たな時代の産業資本創造に向け、後輩諸氏の健闘を切に祈っている。(吉村英輝)
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※次回24日からは、りそなホールディングス会長の細谷英二氏です。