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【すごいぞ日本】論考編?U(上)社会を進歩させる企業 (1/2ページ)
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男は「タフでなければ生きて行けない。優しくなければ生きて行く資格がない」とは作家R・チャンドラー描く私立探偵フィリップ・マーロウの名せりふだが、日本では町工場も含め企業の多くがそうである。本シリーズで取り上げた砲丸は選手の手になじみ、風車は自然の風に調和し、ロボットは人の心を癒やす。
秩父の山々に囲まれた、埼玉県比企郡小川町。そのちょっとした住宅街の片隅に本社を構える「ケージーエス」は、年間売上高17億円の中小企業だが、世界の視覚障害者から頼りにされている。インターネット経由でパソコン上で刻々と流れる大量の情報までも、小さなドット(突起)を上下に動かすことで点字に置き換える電子点字表示装置(点字ディスプレー)の国内唯一のメーカーである。この技術のおかげで目が不自由でもロケット軌道を誘導する航空宇宙管制官になれるようになった。世界の点字ディスプレーのうち75%、40万〜50万台分の基幹部品セット(点字セル)は同社製である。
ケージーエスは1990年代半ば、倒産寸前だった。本業だった電子応用制御装置が競争激化で採算割れ、欧州で発売した点字セルは販売トラブルで出荷停止の憂き目に遭い、銀行は融資を引き揚げた。病で倒れた創業者から社長の座を引き継いだ榑松(くれまつ)武男さん(60)は再建に向け、コストダウンと製品の軽量化、小型化、高性能化に向け開発と改良を重ねてきた。このプロセスこそは日本の製造業の特質そのものである。

