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【産経抄】5月5日
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先日、楽天イーグルスの野村克也監督と母堂のことを書いたら、東京都八王子市に住む荒木幸三さん(72)から、お手紙をいただいた。定年まで勤めた食品メーカーの社訓は、「親孝行」だったという。
▼山形県の農家に生まれた荒木さんは、高校卒業後の昭和29(1954)年、この会社に入った。「親孝行のできない社員は、いくら頭がよくても仕事ができても、当社の社員としてふさわしくない」。これが、創業者から最初にかけられた言葉だった。
▼9歳のとき生母と死別した創業者が大切にしていたのは、米国で研究に没頭する野口英世あてに、母シカが送った手紙の複製だった。たどたどしい文字で、「はやくきてくたされ」と繰り返される、有名な手紙だ。
▼荒木さんが入社してまもなく、「親許(おやもと)送金制度」が始まった。毎月1回、創業者が会社の業績や近況などをしたため、現金1000円を同封して、社員の親元に送るというもの。数年後には中元、歳暮の季節に、会社の製品も送るようになった。
▼「親孝行を口でいうだけではなく、会社がその範を示さなければ、という発想です」と荒木さんはいう。制度はほぼ同じ形で今も続いている。「自慢するようなことではありませんので」と広報担当者はいたって控えめだ。というわけで、誰でも知っている会社だが、社名は明かせない。
▼きょうは「こどもの日」。昭和23年に施行された祝日法には、「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」とある。親孝行の日でもあった。愛知県豊田市で、下校途中の15歳の女子高校生が殺された。看護師の母親にあこがれ、自身も医療の道をめざす、親孝行の娘さんだった。こどもの日には、つらすぎる事件だ。