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【逸品の美学】リコー「GR DIGITAL」
機能と美の同居
「形態は機能に従う」「機能的なものは美しい」−。そう唱えたのは、機能主義的デザインを提唱したバウハウスだったか。
ほどよい重み。ダイヤルやスイッチの操作は意のまま。画像は隅々までシャープネスが行き届き、矛盾を承知でいえば、見た目より美しい色さえ得られる。このカメラには、確かに機能と美が同居する。
平成17年10月に発売され、昨年11月に後継機が出たリコー「GR DIGITAL(デジタル)」。その原型は、1996年に発売されたプロやハイアマチュア向けフィルムカメラのGR1だ。「デジタル化を望む声に応えました」と、商品企画担当の樋口博之さんは話す。
開発コンセプトは、高画質と携帯性の両立。ズームレンズ搭載も検討されたが、単焦点28ミリ(35ミリカメラ換算)の潔さを選んだ。「究極の絵が出るワンポイントを取りだした」
開発時、すでにデジタルカメラの普及期。「A3判見開きのプリントに耐えられる画質を目指した。外側を似せても中身が伴わないとダメだと考えていた」と振り返る。
初代GRDは、半年サイクルのデジカメ市場で2年間モデルチェンジなし。画素数競争とも無縁だった。ユーザーの声を反映してリファインされた2代目もほぼ同じデザインだが、成型の型は新たに制作した。コストをかけて型を作るなら、普通は違うデザインをおこす。「変えないところは変えません」。デザインは完成しているという自負だろう。
「突飛(とっぴ)な機能はいらないから、一点、画質を光らせた道具。ユーザーも目新しさは求めないカメラでしょう。流行に流されず、撮る過程を楽しんでほしい」
そういえば、モダニズム建築を代表するミース・ファン・デル・ローエはこう語った。「Less is more」(より少ないことは、より豊かなこと)。(酒井潤)
過剰にモノがあふれる消費社会のなかで、「たまには玩物喪志(がんぶつそうし)も悪くない」とさえ思わせる逸品がある。形態、品質、物語…。何が私たちを刺激するのか。モノに宿る美意識を探ってみたい。

