ニュース: 経済・IT RSS feed
【ドイツ車はいま】「東独のポルシェ」再生計画 (5/5ページ)
約30年後の一昨年夏、往年のファンからペーター氏の元にメルコス復活依頼が届いた。氏は「旧東独市民は独裁政権に背を向けたものの、いいモノを大切にしたい気持ちに変わりはなかった」と話す。息子(23)と生産を続け、15台完成させた後は新型車を作る方針だ。
氏は「父の心の痛みは一生、忘れまい」と、国家に裏切られ再興の夢を果たせずして逝った父の遺志を心に刻む。メルコス再興への挑戦は、“弔い合戦”でもあるのだ。
再生の動きは、89年の「ベルリンの壁」崩壊に際し東西ベルリンの検問所を大量に越えて一躍、国際社会に名をはせた東独車、トラバント(通称トラビ)にも見える。
トラビは57年、西独で人気があったフォルクスワーゲンの「カブト虫」に対抗すべく、東独政権が生産を始めた。370万台製造された後の91年に生産が打ち切られ、今は5万台が走るだけだ。
今月から、ベルリンなどで車の排ガス規制が始まり、一般車の9倍の二酸化炭素(CO2)を出すトラビを運転すれば、罰金40ユーロ(約6500円)の対象となる。マフラー修理などは650ユーロもかかるから難しく、まさに絶滅危惧(きぐ)種状態にある。
こうした中で、新型トラビの再興に名乗りを上げたのが、独南部ニュルンベルクの玩具メーカー「ヘアパ」。エンジンや外観を一新して販売するという計画で、商標権もすでに購入し、メーカー探しに入った段階だ。
構想が浮上した背景には、トラビ愛好団体の設立が国内で相次ぐといった事情がある。ある社会学者は「東独崩壊から約20年がたち、独内外の人たちが旧東独の過去を客観視できるようになったことが大きい。旧東独市民の間でも、いい意味でオスタルジー(『ノスタルジー』と『オスト』=独語で『東』という意味=の造語)の風潮が高まっている」と分析する。
ドレスデン近郊のトラビ愛好団体、「ザクセンリンク」のジャネッテ・ミュラー会長(30)は「ベルリンの繁華街にポルシェとトラビが並んだら、人々はポルシェを無視するだろう。国内ではポルシェなんか珍しくないが、トラビは希少種で、関心は年々、高まるばかりだ」と笑った。
東西ドイツ統一後、多くの旧東独市民が背を向けたトラビが最新技術を積んで息を吹き返し、真のドイツ車の仲間入りを果たすことはあるのか。
「101%無理」との見方をよそに、激動の歴史を生き抜いてきたトラビは今日も再興への夢を乗せて、ドイツの街角をひたむきに走っている。


















