ニュース: 経済・IT RSS feed
【正論】新しい年へ ニュースが堕落していないか ノンフィクション作家・上坂冬子 (2/3ページ)
このほか、起訴休職外務事務官という珍しい肩書で、いまや文筆業として押しも押されもせぬ地位を確保した佐藤優氏が巨体を揺すって参加していたし、外務省からはロシア支援室長河端一郎氏が人々に好感をもって迎えられていた。三重県の皇學館高校は毎年の修学旅行先としてノサップ岬を選び、生徒に向こう岸の日本の領土を見せているから、あるいは三重県からも参集していたかもしれない。
≪繰り返される漁船の拿捕≫
折も折、デモからほぼ半月目の12月13日にロシア警備艇は、またも知床半島の根元の羅臼の漁船4隻、漁師11人が偽国境線を越えたとして性こりもなく拿捕(だほ)している。
実は、私ごとで恐縮だが数年前から変形性膝関節炎に悩まされて歩行が自由でない。銀座1丁目から目的地の日比谷公園まで40分のデモに参加するのは無理だと判断し、途中からタクシーで目的地に先回りするつもりであった。だが、人々の熱意の中にあって抜け出すタイミングがつかめない。足を引きずりながら私は懸命に最後尾についたが、どんなに努力しても遅れてしまう。
この私に対して警視庁の規制担当者は情け容赦なく追い立てたのである。足に障害があることは告げたが、ともすれば数十センチ間をあける私に対して婦人警官がこういった。
≪反体制勢力と同じ扱いか≫
「失礼ですが、デモから抜けて歩道に上がれませんか?」
失礼ですむ話ではない。このデモに国家的な意味がこめられているのを知らないのかと一喝すべきであったが、歩くだけで精いっぱいの私には抗議をする余裕もなく憤懣(ふんまん)は顔だけにして最後まで歩き切った。もっとも婦人警官の無知を責めるより、北方領土問題に対する一般の認識がこの程度だということに思いを致すべきだろう。
スターリンによる不法占領63年目におよぶ国土を、国家の威信にかけて取り戻したいと願う地元住民の声を政府が本気で取り上げなかった結果、その行進までが反体制デモと同列に扱われているのである。

