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【正論】「ネット」と新聞 新聞界の常識が崩れ去った 東京大学教授・坂村健 (1/3ページ)
デジタル化で「形式」すべて自由に
≪従来の枠組みバラバラに≫
産経新聞がインターネット上に新しいニュースサイトを立ち上げ、朝日、読売、日経の3社が販売店網の提携とネット配信の共同化を発表した。いま「新聞の未来」が大きく変わろうとしている。
この問題を語ろうとするとき気をつけなければならないのは、この主題が1つの主題ではなくなってしまった、ということだ。それを無視しあくまで一体として情緒的議論をすれば、混乱するだけで建設的な議論にはならない。
「新聞の未来」はいま、新聞「記者」の未来、新聞「社」の未来、新聞「レイアウト」の未来、新聞「広告」の未来、新聞「紙」の未来、新聞「販売店」の未来、新聞「折り込みチラシ」の未来−−ざっと考えてもこれだけの未来に分裂してしまった。
そして、この分裂を招いたのが社会のデジタル化・ネットワーク化である。
従来の社会が物理的だった時代、新聞は紙に印刷し配達するしかなかった。
新聞が「紙」だからこそ、多くの「記者」と日単位の印刷のための高速輪転機という資本を抱えた「社」と、配達のために「販売店」が必要だった。また「紙」を前提とした長年の工夫が、現在の見出しと本文配置の妙で短時間のうちに読める「レイアウト」を確立し、限られた面積だからこそ新聞「広告」は高い広告料を取れた。新聞と一緒に配るからこそ「チラシ」は特権的な配布物であり、「販売店」はそれで潤った。
≪文字情報の読者は残るが…≫
しかし、社会のデジタル化・ネットワーク化により状況は変わる。大量の文字ニュースを秒単位の新鮮さで、しかも必要に応じて地球の裏側からでも配布も取り寄せもできる時代になった。しかも、基本的にコストは限りなくゼロに近い。
この変化により、文字ニュースは「紙」の縛りを離れ、いままで「新聞」という名のもとに運命共同体だったさまざまな要素を、バラバラに運命を語れるものにしてしまった。「新聞の未来」について私に確実に言えることは「新聞」という概念がバラバラになること。文字ニュースの「読者」は存在しつづける。その2つだけだ。

