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【棋聖戦・梅田望夫氏観戦記】(1)桂の佐藤棋聖、銀の羽生挑戦者 (4/5ページ)
ひとつの例だが、「弱い将棋ファン」「指さない将棋ファン」の皆さんは、今日の「世紀の対決」の推移を、羽生さんが「つなぎの糊」のように銀を使うのかどうか、佐藤さんは「意志を持って」桂を戦いに参加させていくのかどうか、そんなところに注目して観戦してみたら、どうだろう。
将棋について書かれたものを読み、自分なりの楽しみ方で、将棋を観る。それは、将棋ファンである私たち一人ひとりに開かれた自由なのだ、そう思うのです。
さていよいよ朝8時40分。対局室に入り、佐藤棋聖、羽生挑戦者の入室を待つ。8時50分、紺の着物姿の佐藤棋聖がゆっくりとした足取りで入室。上座に坐った。扇子、ハンカチ、時計を身の回りに揃え、じっと目をつぶる。3分遅れで、足早に鮮やかな浅黄色の着物姿の羽生挑戦者が入室。紺と浅黄色。対局室にぱっと花が咲いたようである。両者の脇息の横には、水とお茶のペットボトル、番茶の魔法瓶が並んでいるのだが、佐藤棋聖のリクエストであろう、佐藤棋聖の横にだけ、ペリエ3本と野菜ジュースが1本(カゴメの「野菜生活」)が並んでいる。
羽生さんが座布団の前に扇子を用意したところで、2人は礼をして、駒音をあまり立てずにゆっくりと駒を並べていく。
佐藤さんと羽生さんが、将棋界の頂点を極めている理由は何だろう。2人とのプライベートな交流を通して、私はいつもそのことを考えてきた。そしていま思うのは、「とりつかれている」と言えるほどの将棋への愛情の強さと没頭・専心、将棋の奥の深さに魅了されている度合いが、2人とも並外れているのではないか、それが、ひしめく天才たちの中から抜きん出るということなのではないだろうか。
佐藤さんは元旦対談のとき、
「将棋は誰かが作ったゲームなんだけれども、ぼくは神が作ったゲームかなとも思うときがあります」
とおっしゃった。600年の長きにわたって、将棋に魅せられたたくさんの先人たちが、心血を注ぎ、人生を賭けて、将棋を研究し続けてもなお、将棋というゲームの謎はまったく解明されない。そんな複雑で魅力に溢れたゲームは、本当に人の手によって創られ得たものなのだろうか、いや「神の手」によって作られたとしか考えられない。そういう意味の言葉だ。
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