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【土・日曜日に書く】論説委員・石川水穂 帝王教育の大切さを伝える (3/3ページ)
◆多忙の中のくつろぎ
小泉氏がご進講に使用した主な教材は、福沢諭吉の「帝室論」とニコルソンの「ジョージ五世伝」である。「帝室論」で福沢は、皇室は政治の外で高く仰ぐべき存在だと説いている。「ジョージ五世伝」は、イギリス国王のジョージ5世(1865〜1936年)の生涯を詳細に記した書物だ。
小泉氏は「ジョージ五世伝」をご進講の教材に選んだ理由について、昭和33年1月9日付毎日新聞でこう語っている。
「ジョージ五世、近代イギリスの名君というんだが、義務感のつよい良心的な王さま。英雄でも天才でもない。人としても王としても立派な…」「(皇太子)殿下は長い負担の多い一生を、われわれにくらべればずっと休息の少ない生活を送られると思うけれども、その中に笑いを見出(みいだ)し、おかしみを感じ、くつろぎを持っていかれることを願っている」
ご進講に使われた「ジョージ五世伝」の巻末の余白には、「Oct・7・54 April3 1959(for the second time)」と2度の読了記録が記されている。2度目の1959(昭和34)年4月3日は、殿下のご結婚の儀の1週間前にあたる。「小泉信三展」では、これらの教材も展示される。
現在、天皇陛下は、小泉氏が予想した以上に、土曜、日曜もないほど多忙な日々を送られている。憲法に定められた国事行為をはじめとするさまざまな公務のほか、新嘗(にいなめ)祭や春秋の皇霊祭などの宮中祭祀(さいし)を昭和天皇にならい、厳格に心を込めて執り行われている。
小泉氏の業績を取材し、帝王教育の大切さを改めて思い知らされた。(いしかわ みずほ)