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女性の国際囲碁連盟事務局長“奮戦”
■3年目新たな一歩
女性として初めて国際囲碁連盟事務局長に就任して3年目を迎えた日本棋院二段の重野由紀さんは、今新しい国際イベント開催の準備に忙しい。長いイタリア生活を切り上げ、日本に戻って本業の対局も再開したが戸惑いもある。名古屋に拠点を置いて、夫のイヴァン・ヴィガノさんのサポートを受けながら新たな一歩を踏み出す。
20代後半にヨーロッパを旅して、囲碁を学びたいという愛好家たちと出会った。勝ち負けよりもゆったりと楽しみながら日本文化を学びたいという雰囲気が素晴らしかった。
仲の良い関西総本部の水戸夕香里三段と、イタリアのミラノにあるコミュニティーセンターで囲碁の指導をした時に出会ったのが、夫のイヴァンさん。
「我が家を使って思う存分活動してみては」という協力の申し出に、そのまま住みついて10年近く。ヨーロッパ各地だけでなくトルコ、インド、キューバなど30カ国以上を訪問して子供や学生、クラブ会員の指導をしてきた。ロンドンでは広島市郊外で行われた「原爆下の対局」を紹介する「囲碁と平和のイベント」に協力した。
そんな実績が認められ平成18年1月に国際囲碁連盟事務局長に就任。
現在70カ国の国と地域が参加しているが、最近、パキスタンやエジプト、ケニアなどから「どうやって組織づくりをしたらいいか」「指導棋士を派遣してもらえるか」「本を送ってほしい」などの問い合わせがある。増える兆しはあるが、チェスやブリッジの国際組織に比べるとまだまだ少ないという。
今年の最大イベントは、北京五輪のあと10月に開催されることが決まった世界マインドスポーツ大会。
囲碁だけでなくブリッジ、チェス、チェッカーの4種目と、開催国中国の要望で中国将棋を加えた5種目が、オリンピックで使われるコンベンションセンターを利用して開かれる。
「違うゲームが集まって開かれる初めてのケースです。中国棋院が積極的に動いてくれています。私は各国のアマチュア団体間の連絡係という役割です。囲碁もチェスやブリッジに負けないくらい参加してほしい」
重野事務局長の熱い思いが伝わってくる。
連絡はメールでのやりとりが多いが、英文のアドバイスとチェックが、夫イヴァンさんの役目でもある。
ミラノの大学で社会福祉を勉強し、ソーシャルワーカーとして働いていたが、重野さんの帰国もあって大好きな日本へ。
福祉関係の仕事はなかなか見つからず、今は囲碁サロンのインストラクターをしている。
学生時代の親友の父親が囲碁協会の会長さんで、柔道も教える日本愛好家だった。その会長さんの手ほどきを受け、もっぱらパソコンで腕を磨いたという。かなり上達したと思っていたが、盤をはさんで人間同士でやるとうまくいかなかった。
日本で囲碁サロンの指導をしながら強くなり今では四、五段の高段者。
「囲碁は世界のゲームになってきました。世界アマ選手権も日本だけでなく、もっといろいろな国で開かれるようになってほしいですね。スポンサーも、探せばアメリカやほかにもたくさんあると思います」
アイデアマンのイヴァンさんは、重野事務局長にとって頼もしいアドバイザーだ。
日本での対局に復帰した重野さんが驚いたのは、棋戦の持ち時間が短くなったこと。以前は終局が深夜になることも多く、院生や若いプロ棋士がいっしょに検討する光景があった。
ところが、最近は国際棋戦の3時間に合わせるようになり、終局が早くみんな帰ってしまう。
記録も「お願いします」と声が出る時計を使うようになり、重要な棋戦以外は院生の記録係がつかなくなってしまった。
「何かとても寂しい気がしました。昔の厳粛な気分が懐かしいです」
今国際棋戦で日本の棋士が韓国や中国になかなか勝てなくなってきているが、重野さんは「囲碁人口やプロの研究時間の量を比べると、今のままではとても追いつけない。それよりも囲碁大学や研究所などをつくって囲碁文化を守り育てる役割もひとつの選択肢としてあると思う」と提言している。(保坂勝吾)


