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【話の肖像画】美手ありき(4)女流棋聖・梅沢由香里さん
■勝ちたいと思うと負ける
−−棋士人生で最も印象に残っている「勝ち」と「負け」を教えてください
梅沢 3年前の第3回正官庄(チョンカンジャン)杯(日中韓の3国による女流囲碁最強戦)に日本代表のトップバッターとして出場したとき、すごく緊張したのですが、奇跡的に勝てた。最も印象的な勝利です。
−−奇跡的?
梅沢 少し話が前後しますが、わたしの「最も印象に残る敗戦」は5年前、2つのタイトル戦の決勝までゆきながら、精神的な弱さを丸出しにしたような負け方で、両方ともタイトルを逃したことです。そのときは1カ月くらい落ち込みました。ところが、その2年後の正官庄杯では、同じようにすごく緊張する場面で、以前の自分の、ものすごくいやだった点を克服して勝てた。この勝利でつけた自信が今年2月の女流棋聖の初タイトルにつながるのですが、何で勝てたかは全然分かりません(笑)。
−−梅沢さんの「精神的な弱さ」とはなんでしょう
梅沢 練習ではすばらしいプレーをするのに、本番に弱いスポーツ選手を想像していただいたらよいでしょうか。わたしの場合、失敗の数がけた外れに多くなり、自分で「頭がおかしい」と思いながら打っている、そんな感じです。これは相手がわたしの碁を研究しているからどうというのではありません。自分自身の問題です。
−−自由奔放な棋風でしられる藤沢秀行名誉棋聖は「勝ちたいと思うと碁の思想が低くなる」といっていますね
梅沢 勝ちたい、と思うとろくなことがないなあと痛感しています。碁は代わりばんこに打ち、将棋のような王手飛車取りはありませんから、そう簡単には形勢はよくならない。だからいつもバランスが取れた一手が必要になるのですが、勝ちたい、と思うと「早く形勢をよくしよう」と考えてかえって悪手を打ち、負ける。勝ちたい、と思いすぎて空回りすることがあるわたしには、気持ちのもってゆき方が常に課題です。
−−話を碁の国際化に移したいと思います。碁にはそれぞれの国の国民性が反映されるのでしょうか
梅沢 そうですね、中国は結構独創的な碁なのですが、どちらかというと、石がぶつかり合う“闘い”のときに強い碁です。韓国は日中韓の3カ国の中では一番勝負に辛い。どこの国も勝ちにこだわっていますが、韓国は思いっ切り勝負。まず勝たねば仕方がないだろう、というような合理的な碁ですね。
−−近年、国際戦で勝てない日本は?
梅沢 3カ国で一番、形のきれいさとか、バランス感覚にこだわったりとか、何か全体的な調和を意識しているような気がします。(聞き手 関厚夫)