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【新・仕事の周辺】イッセー尾形(俳優) 言葉にした段階で体験 (1/2ページ)
そろそろ次の新作を作る時期なんだけど、街を歩いても相変わらず散文的すぎて目が回るだけ。ネタのタネはどこにある? 一人芝居という形態を30年続けているけれど、それは「どうやって作るの?」という問いかけを30年続けていることに等しい気がする。
窓を開けて、今年はやたらと匂(にお)うキンモクセイの香りを楽しみながら、村上春樹さんの『海辺のカフカ』を再読している。ちょうど空から大量のヒル(蛭)が降ってくる箇(か)所だ。(キンモクセイとヒルの組み合わせ!)
最初読んだ時は「おお蛭が!」と驚いたまま先に進んだものだけど、さて、ヒルが降るってどんな光景だろう。本物は見たことが無い。立ち止まって考えてみる。
映画「スタンド・バイ・ミー」で少年たちが死体を見に行く途中、沼で襲われるシーンがあったけど、ヒルといえばそれしか思いつかない。(もちろん撮影用の作り物だろうけど)そこで、そのヒルが空から降ってくる場面を無理して想像すると、僕の中では少年たちも一緒に「わー」と叫びながら落ちてくる。ヒルだけど切り離せない。不便なものだ。でもだからといって村上さんの小説の場面が分からないということはない。
「ぬるっとして」「べとりべとりとして」「ぼたぼたとして」あげくに血を吸い取られるヤツが空から降って来たんだ。実際の光景なんか想像できなくったって、いやむしろ思い描く明確な絵が無いからこそいっそう不気味で迫力があるってこともありえる。
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