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【書評】『かけら』青山七恵著 (1/2ページ)
■平凡な日常の奥に光と影
川端康成文学賞を受賞した「かけら」を含め3編の小説を収めた作品集である。
「かけら」は母親が予約してきたさくらんぼ狩りのツアーに、ひょんなことから父親とふたりで出かけることになった大学生の娘の視点で描かれている。娘は写真教室に通い風景写真を撮るのにいい機会だと思って行くが、ふだんからほとんど会話のない父親との話はぎこちない。口数も少なく家族の間でも存在感の薄い父。娘は家を出て生活しているが、一緒に住んでいたころの父親を思いだす。
「食後の散らかったテーブルだとか、ベランダのクッションがやぶけた椅子だとか、階段の下に置いてある荷物置きの台とか、そんなもののあいだにすっとなじんで、そのまま同じ風景になっていた父。何種類あるのかわからないグレーの背広を着て、朝八時きっかりに家を出、駅へ向かう人々の中にすぐまぎれてしまう父」。娘が撮った写真の1枚の中に、そんな父がふいに別の顔を現す。知っているつもりであった肉親が「まったくの見知らぬ人」であるかのように風景の中に不思議な光を帯びて浮かび上がる。
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