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【書評】『神去なあなあ日常』三浦しをん著

2009.7.5 08:40
このニュースのトピックスフリーター・ニート
神去なあなあ日常」神去なあなあ日常」

 ■山で逞しくなっていく青年

 知らない世界の話は実に面白い。たとえば、林業だ。

 日本の山持ちの8割以上が20ヘクタール以下の山林しか持ってないから、山を買うときは斜面の下を誰が持っているかよく調べてから買ったほうがいいという。

 なぜなら、三郎じいさんの言葉を借りると、「性根の悪いもんだと、下の土地を通るのを許してくれんのや。そうすると、せっかく切った木を運び下ろせんやろ」

 ということになるからだ。 あるいは、樹齢が20年を超えた森はだいたい5年おきに間伐し、良質の材になりそうな木だけを残していく、ということもある。間伐しないと木が密集しすぎて、生育の妨げになるからだ。

 しかし、間伐しすぎてもよくない。特にヒノキは、日当たりがよすぎると枯れてしまうらしい。それに30年生ともなれば、間伐した木も材木として出荷される。

 そういうことが次々に出てくる。山での出来事は神様の領域なので、お邪魔しているだけの人間はよけいなことに首を突っ込まない、ということも語られる。流れている時間が都会とは違うのである。

 それを感じるのは、高校を卒業したばかりの平野勇気君だ。大学に行く気はなく、きちんと就職する気もなく、フリーターでいいやと卒業式までだらだら過ごしていたら、その当日に「就職先を決めてきてやったぞ」と担任。林業に就業することを前提に、国が助成金を出す制度があり、親と担任が結託してそこに勝手に応募していたらしい。

 あっという間に山村に連れていかれると、圧倒的に若い者が少ないとの事情があり、ようやく林業の後継者志望が現れたと熱烈歓迎。これではいやですと帰りにくい。

 というわけで、平野勇気青年の山での日々が始まっていくことになる。

 林業に従事する個性豊かな面々と触れ合ううちに(ヘンなおやじばっかりだ)、この都会のひよっこが徐々に逞(たくま)しくなっていく過程が見もの。その変貌(へんぼう)を静かに、そして力強く描いていくから、いつの間にか物語に引きずり込まれていくのである。(徳間書店・1575円)

 評・北上次郎(評論家) 

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