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【文芸時評】1月号 早稲田大学教授 石原千秋 (1/3ページ)
■現代文学には希望がある
水村美苗が、日本語のために、時間を巻き戻して戦前に帰れと提言している(『日本語が亡びるとき』筑摩書房刊)。これが話題を呼んで、1月号で対談したりインタビューを受けたりしている。水村の主張の中心を乱暴に要約すれば、こうなる。
近代日本語が成立した時代、日本人にとっての「普遍語」(書き言葉)は漢文であって、後に「国語」と呼ばれることになる言葉は「現地語」(話し言葉)でしかなかった。その後、日本の国力のおかげで、日本人はアジアの中では例外的に「国語」で学問ができる国になった。しかし、アメリカの国力に関係なく、インターネット時代においては英語が「普遍語」になり、日本語は再び「現地語」になるしかない。
そうならないために、これからの教育では、話せる英語教育ではなく、読む英語教育をすべきだし、まず明治・大正・昭和初期の近代文学をきちんと教えるべきだと言うのである。実は、水村自身が自己申告(?)しているように、アメリカで育った水村は、昭和初期に刊行された『現代日本文学全集』で日本語を学んでいる。
水村は「八〇年代に日本に帰ってきたら、それまで読んできた日本の小説とは似ても似つかないものがもてはやされている」ことに「ショック」を受けたと言う(新潮)。現代文学全否定に近い。おりしも、文部科学省から高校の学習指導要領の改訂案が発表された。「英語の授業は英語で行うのが基本」だとする。僕たちは現代日本を生きている。批評は自己の正当化にならざるを得ないが、水村の感性にどこまでお付き合いすべきだろうか。
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