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【週末読む、観る】(1)『やまと教』ひろさちや著ほか (3/4ページ)
【書評】『ゼロ年代の想像力』宇野常寛著(早川書房・1890円)
評・佐々木敦(批評家)
過酷な現代を生きる処方箋
雑誌連載時から話題を呼んでいた、気鋭の若手批評家による長編評論である。題名に端的に示されているように、すでに残り1年余りとなった「200X年」すなわち「ゼロ年代」になって登場してきた、(著者の考えるところの)新たな「想像力」のありようを、小説、コミック、映画、テレビ、アニメなどのサブカルチャー的事象を大胆に横断しつつ、力強く描き出そうとしたものだ。
力強く、というのは単なる形容ではない。著者の主張は極めて強烈なものだ。「ゼロ年代」とは、本書では明確に「90年代的なるものへの決別」として位置づけられている。「90年代」は「引きこもり」の社会問題化に代表されるように、「セカイ系」とも呼ばれた内閉的で自足的な心性が支配的であり、一大ブームを巻き起こした「新世紀エヴァンゲリオン」を筆頭に、表現の分野でもそうした作風が支持されていた。
だが「ゼロ年代」になって時代は変わった、いや、変わらなくてはいけないのだと著者は言う。そこで代わって打ち出されるのが「サヴァイヴ系」であり、その背景を成す「決断主義」である。宮藤官九郎脚本のTVドラマやよしながふみのマンガから著者が見いだすのは、「勝ち組/負け組」や「格差社会」という言葉に象徴されるような、一種の戦争やゲームに例えることのできるような過酷な状況において、闘いを放棄して自分だけの「世界=セカイ」に閉じこもることなく、他者や社会と対峙(たいじ)してゆくには、一体どうしたらいいのか、という困難な問いへの処方箋(せん)である。この意味で、本書は文化批評の枠を超えて、いわゆる「ロスト・ジェネレーション」以降の世代にとっての、一種の「人生論」の風貌(ふうぼう)をも帯びている。
この種の本にありがちな、固有名詞の羅列によって論旨をごまかしているような所もなく、著者の姿勢は実に明快である。それゆえにこそ、異論も含めて、さまざまな世代と立場の読者に多様な読み方をされてゆくことを望みたい。
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うの・つねひろ 批評家。昭和53年生まれ。