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【週末読む、観る】(1)『日本主義と東京大学』など (3/5ページ)
【書評】『虫の肖像』クレール・ヴィルマン、フィリップ・ブランショ著、奥本大三郎訳(東洋書林・8400円)
評・小原秀雄(女子栄養大名誉教授)
■超拡大写真で見せる「素顔」
さまざまな昆虫の「素顔」を、ふだん見ることのできないほど超拡大してみせてくれる昆虫図鑑である。よく知られているものから、世界の珍種、稀種を含む11目104科600種に及ぶ解説を加えた二百数十点の写真は圧巻で、異星人さながら奇妙であり美しい。
虫の「肖像」とは、その虫がどういう環境で生き、何を食べているかを表すものと呼ぶべきか。虫の口器を見ると食物によってそれぞれ特別な形を成し、口器によって頭部の形が決まってくることが分かる。例えば、以前評者がアフリカで刺された時の痛みが忘れられないツェツェバエは、人間や家畜の血を吸うため、鋭い口器が特徴的だ。熱帯雨林の最も獰猛(どうもう)なアリ、トラバサミアギトアリは、180度に開くことのできる尖(とが)った鋭い大あごを持ち、小さきものの命を守る姿が印象的だ。あごにある敏感な毛が獲物を瞬時にはさみ、天敵から逃げるときは、あごのはさみを閉じる非常に強い反動を使って巣から40センチもはじけ飛ぶという。
ほかにカメムシの繊細な管、クワガタの異様に発達した大あご、キリギリス類の愛嬌(あいきょう)ある顔、トナカイツノコガネやツノゼミの風格漂う角。見慣れているはずのトンボの複眼でさえ、改めて見ると神秘すら感じさせるし、チョウのゼンマイのように巻いた口吻(こうふん)はやはり自然の驚異としか言いようがない。
ところで昆虫はガがマラリアやペストなど重大な伝染病を媒介したり、シロアリは建物を破壊したり、トノサマバッタは大発生して人間の食糧に大きな害を与えるなど害虫の印象が強く、嫌われものだったりする。だが、多くの種は無害で自然界の循環や維持に欠かせない役割を果たしているのである。
愛すべき?虫たちの拡大した顔を、ファーブルの国の学者たちが細部にわたって紹介した本書を、奥本大三郎氏の詩情豊かな訳文によってこの夏、親子で楽しむことで、もっと親しみがわくであろう。
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Claire Villemant パリ自然史博物館主任協議委員。