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【書評】『虚夢』薬丸岳著
このニュースのトピックス:秋葉原通り魔事件
江戸川乱歩賞作家が本作で選んだ題材は「通り魔」と「心神喪失」である。通り魔に娘の命を奪われた佐和子はある日、犯人の男を街角で目撃する。事件後すぐに逮捕されていたが、精神鑑定の結果、不起訴となっていた。強制入院させられていたはずだが、もう退院したということか? 佐和子は元夫とともに、男の行方を追い始めた…。
乱歩賞受賞作『天使のナイフ』では少年法の問題点を、受賞第1作『闇の底』では性犯罪者の再犯の問題を、鋭くえぐった著者は、本作でも社会のひずみを見事に描いてみせた。秋葉原の無差別殺傷事件が、本作の刊行後であることを考えると、社会を見つめる著者の「視力」の良さを実感させられる。一流のミステリーであり、人の強さを描いた感動作である。(講談社・1575円)

