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【直木賞講評】「文学のイロハがほぼ完璧」平岩弓枝選考委員
井上荒野氏(47)の「切羽へ」に決まった第139回直木賞の選考経緯について15日、平岩弓枝選考委員が説明した。
講評の過程は、第一次審査で井上荒野、山本兼一、和田竜の3氏が残り、決選投票に持ち込まれ、非常に競ったが、最終的にすんなり井上さんが満票で決定した。
主人公の女性が夫と若い男性の間で行ったり来たりしている様子は、セックス描写をおさえた分、逆に官能豊かな作品に仕上がった。構成、人物ともしっかり描かれ、方言と標準語を巧みに使って不思議な効果をもたらしており、文学のイロハがほぼ完璧である。
井上さんには今後も思い切って書いてほしい。せわしない世の中にあって、実にゆったりストーリーが進む心地よさがいい。インパクトや素材の面白さについ飛びつく傾向にあるが、堂々と正道を歩く人間模様を見事に書き抜いてほしい。
山本、和田両氏は歴史、時代小説を書いているが、歴史をどう見るかや時代考証など従来の歴史認識の基準からかんがみると、少々の難がある。だが、この分野の書き手が少ないからこそ、お二人とも貴重な存在で今後に期待したい。
三崎亜記さんは着想の面白さ、若い感性が眼を見張るものの、まだ読者を感動させるほどの熟成が感じられず、不満が残る。
荻原浩さんは、好感度は非常によかったものの、新聞連載が一冊の本になったとき前半と後半でアンバランスが感じられる。座敷わらしの書き方も誰もが抱くイメージの域を出ておらず新鮮味がない。また、都会から地方転勤になった家族が素直にまとまっており、インパクトに欠ける。
新野剛志さんは、素材の面白さがあるが、まだ小説として未熟であり、もう一回読んでみたい。