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【週末読む、観る(2)】『ケータイ小説的。』『コンビニのレジから見た日本人』ほか (1/4ページ)
■【ギャラリー】『非水百花譜』杉浦非水(ひすい)画、金子賢治監修(ランダムハウス講談社・2940円)
杉浦非水はグラフィックデザイナーのさきがけで、日本に商業美術を根付かせた。東京美術学校を卒業後、黒田清輝にアールヌーボーの資料を見せられ、図案家を志したという。明治41年に百貨店、三越の意匠部に入社。雑誌の表紙やポスターなどさまざまな名作をデザインした。
『非水百花譜』は最初、大正9年から11年にかけて出版された。本書は新たに再編集しての復刊。写真はあじさい。洗練された写生は今も生き生きとしている。
■【大書評】『狐のかんざし』花柳章太郎著(三月書房・2625円)
評・岩下尚史(作家)
新派百二十年記念の呼び声に、彼方(かなた)から花を添えるような、ゆかしい女形の芸談の刊行は嬉(うれ)しい。
多忙な舞台の隙(すき)を見ては、風流韻事に心を遊ばせる嗜(たしな)みを忘れなかった花柳章太郎は、生涯に十に余る、美しい装丁の著作を残したが、本書は晩年の五年間に新聞雑誌に掲載された随想を纏(まと)めたもの。この当時、人間国宝及び芸術院会員、ついには文化功労者など数々の栄誉に浴した反面、初代水谷八重子を中心とする女優勢に主座を奪われつつあった。それだけに楽屋人生を見尽くした諦めの果ての、淡々とした語り口には滋味が溢(あふ)れる。しかし、そこは果敢(はか)ない芸者の意気地を当たり芸にし続けた一代の女形である。白湯(さゆ)を飲むような洒々落々(しやしやらくらく)たる味わいの底に、黄昏(たそが)れる女形芸への執念の苦味を残して奥がある。
壮士芝居、書生芝居まで遡(さかのぼ)れば、なるほど百二十年だが、現在の劇団新派の直接の先祖は、高田実、伊井蓉峰(ようほう)、河合武雄、喜多村緑郎(ろくろう)など、素人の若旦那、あるいは梨(り)園(えん)門閥の外にあった若者と見るべきだろう。さらに歌舞伎に対しての新派という言い回しから、なにか旧派に対抗して興った演劇運動のように思われがちだが、それは買い被りというもの。大歌舞伎の舞台に立つことのできない町内の若旦那たちが、親兄弟に呆(あき)れられながら、好きが高じて一座を組み、歌舞伎の世話物の真似事から始まった。それだけに旧派よりも江戸趣味に憧(あこが)れる傾向も濃い。初期の台本には泉鏡花や佐藤紅緑(こうろく)など、当時流行の新聞小説を仕組んだところに、花柳界を中心とする女性客に人気が集まり、大正、昭和を経るなかで、栄枯盛衰と離合集散を繰り返し−という流れは、本書の「新派十話」に簡潔に纏められている。
この文芸路線を引き継ぎ、戦後の新派再興に奮励し、回顧的な都市風俗劇に成果を上げた花柳章太郎には、近代文学の机上の知識ではなく、生きた教養が備わっていたことが、本書の随所に偲(しの)ばれる。
◇
はなやぎ・しょうたろう 明治27年、東京・日本橋生まれ。昭和40年、死去。
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