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【週末読む、観る(3)】話題の本『岩佐又兵衛』 (2/4ページ)

2008.7.6 10:27
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■【この本に出会った】『山小屋ごはん』松本理恵(山と渓谷社) 

◯漫画家・エッセイスト 鈴木ともこ

 根っからのインドア派だった私が、三十路にして山登りにハマっている。ダイエットのつもりで登った高尾山で山の魅力に気づき、中央アルプスの木曽駒ケ岳で見た雲上からの絶景で、とりこになってしまった。

 山登りの魅力はいろいろあるが、私の場合、まずは何といっても山頂からの景色だ。自分の足で登らなくては見ることができない絶景。しかも、ゆっくり歩いても、山頂は逃げない。人と競わず自分のペースで進めるところが、運動オンチの私にはちょうどいい。

 もうひとつは、山で食べるごはんのおいしさだ。素朴なものでも、山で食べるごはんのおいしいこと! 絶景と心地よい疲労と空腹、これに勝る味付けはないだろう。

 『山小屋ごはん』には、書店で表紙を見た瞬間に引き込まれた。それ以来、私の机の一番目につく場所が定位置となっている。ほぼ毎日、仕事の合間に読み返してしまう。

 パン好きのご主人が薪ストーブで丁寧に焼き上げる厚切りトースト。98歳のご主人が奥様亡き後、ひとりで作るハヤシライス。おばあさんとお孫さんが真心込めて作る天ぷらや酢の物。門外不出のとろろごはん。

 どのページを見ても、今すぐ行きたくなる。単においしそうな写真が載っているからではない。その食事が作られるようになった歴史と、作り手の山と登山客に対する思いが、ユーモアを交えた温かい文体でつづられているからだ。

 湯気の向こう、テーブルに集う人たちの気配が伝わってくる。ごはんを通して、人と山のぬくもりある物語を感じられるから、本書にひかれてやまない。

 なぜ山に登るのか。私の場合、ここに『山小屋ごはん』があるからかもしれない。ページをめくる度、心は山に飛ぶ。読むことで山へあこがれがふくらみ、日々の活力となる。

 次はどこに登ろう。本書を眺めては夢想している。

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