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【週末読む、観る(3)】話題の本『岩佐又兵衛』 (1/4ページ)

2008.7.6 10:27
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■【話題の本】『岩佐又兵衛』(文春新書・1260円)辻惟雄(のぶお)著

 伊藤若冲(じゃくちゅう)、曾我蕭白(しょうはく)、長沢蘆雪(ろせつ)、狩野山雪(さんせつ)、歌川国芳(くによし)−。美術史家、辻惟雄氏が名著『奇想の系譜』(昭和45年刊)の中で、「江戸のアヴァンギャルド」画家と呼んだ5人だ。今では年配者から若い美術ファンまで、その絵を一目見ようと展覧会に押しかける。ところで、辻氏は同著でもう1人、重要な画家を紹介していた。

 岩佐又兵衛だ。「ただ又兵衛だけが、なぜか出世から遅れて、多くの関心を引かぬままに来た」とこの新著で述べている辻氏も、最近ようやく関心の高まりを感じるという。「伝説の浮世絵開祖 岩佐又兵衛」展(千葉市美術館、平成16年)が開かれたり、研究本の出版も増えているとか。もっとも、日本画の面白さに目覚めた一般の人々が、「もっとすごい画家はいないか」と貪欲(どんよく)に情報を求めていることが大きいだろう。

 かくして発行後2カ月半で、2刷1万8000部。美術本としては上々の滑り出し。文春新書の細井秀雄編集長は「やはり又兵衛は“真打ち”ですからね」。そうなのだ。辻氏にとって又兵衛は「若いころから終生、自分の意識につきまとって離れないテーマ」であり、この本は自分の「又兵衛論の総決算」と言い切る。又兵衛の真筆か否かで意見が割れていた「舟木家蔵 洛中洛外図屏風」について、老研究者が長年の論争に自ら決着をつけるくだりは、ちょっと感動的ですらある。

 そんな美術界の事情はともかく、又兵衛の人生はドラマチック。戦国大名の子に生まれながら、信長に母と一族を殺され、画筆のみを頼りに京都、福井、江戸と流浪の生涯を送った。しかも表舞台での活躍とは別に、「浮世絵の元祖」という知られざる顔を持つ。美術解説書、歴史ドラマ、ミステリーとしても楽しめる1冊。(黒澤綾子)

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