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【週末読む、観る】著者に聞きたい・岩井志麻子さんほか (1/4ページ)
【著者に聞きたい】岩井志麻子さん
『鐵道心中』(双葉社・1890円)
■持っていることの不幸せ
大正時代に実際に起きた、良家の麗人がお抱え運転手と恋仲になり、鉄道心中を図った事件をモデルにしているという。「『千葉心中』という歌が残っているんですよ。男は死にましたが、たいそうなところのお嬢さまで奥さまだった女は生き残りました。ところが、離縁はされたものの親にかくまわれた彼女は、使用人の男とまたもめごとを起こすんですね。チャタレイ夫人なんですよ」と笑う。
ふだんは「岡山貧乏ホラーと現代エロ小説の2本だて」と自らの創作ジャンルを区切るが、「たまに大正の浪漫期を舞台に、山の手の裕福なお嬢さんたちが出てくる上流ものを書きたくなるんです。私にとってお嬢さんたちを使ってお金持ちという設定は、お人形さんごっこみたいなもの。それに大好きな昔の鉄道の要素が加わって」理想的な小説の舞台が整った。
初出は「小説推理」(平成18年4月号〜今年4月号)の連載。毎回20枚ずつ書いていったが、「長編って苦手なんですよ私。準備して練習するみたいなことができなくて、いつも一発勝負です。今回も私自身が読者そのものとなって、物語が徐々に変わっていきました」という。
時は大正の半ば。帝国大学教授の令嬢で、商社社長令息の夫人でもある井内露子は、お抱え運転手の酒井大紀と鉄道心中を図る。露子は頭骨が露出するほどの重傷を負って死線をさまようが、軽傷だった大紀は、なぜか現場から逃走して行方知れずになる。新聞記者の竹中直吉は九死に一生を得た露子の身辺をかぎまわるが、やがて露子の妖艶(ようえん)さに蠱惑(こわく)されていく…。
テーマには「人間の幸せとは何か」もある。容姿にしても財産にしても「持ってることの不幸せって、あると思いますよ。大金持ちの麗人と赤貧のブスと、どっちが幸せだと思いますか?」。本書を読了してから、改めて考えてみよう。(宝田茂樹)
◇
いわい・しまこ 昭和39年、岡山県生まれ。著書に『ぼっけえ、きょうてい』『派手な砂漠と地味な宮殿』など。
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