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【書評】『なぜ、子どもたちは遊園地に行かなくなったのか?』白土健・青井なつき編著
■思い出の丘の上の観覧車
遊園地−こうやって記すだけで、僕の世代はなんだか愉(たの)しい気分になってくる。幼い頃に聴いた児童合唱団が唄う「ピクニック」のメロディーとともに、郊外の丘の上に見えた観覧車の風景…が思い浮かぶ。
『なぜ、子どもたちは遊園地に行かなくなったのか?』と、本書は最近の“新書調”のタイトルが付いているけれど、内容は児童心理や社会状況の変化を固く究明するようなものではなく、主に近年閉業した有名遊園地の歴史や逸話が肩のこらないエッセー風に綴(つづ)られている。2人の著者の年齢は明かされていないが、ともに東京近郊育ちの僕と近い世代の人たちなのだろう、往年の遊園地アソビの熱がよく伝わってくる。
昭和30、40年代に栄華をきわめた老舗遊園地の数々は、大まかにいうと、石油ショックによる不況とその後のインドア遊具(TVゲームなど)の普及によって、閉園に追いこまれたようだ。後半では「東京ディズニーランド」以降のテーマパーク型遊園地の魅力が語られる。
僕がとりわけ興味をそそられたのは、迫力満点の古典的遊具の記述。たとえば「よみうり遊園」(二子玉川園)にあった大落下傘塔は、地上50メートルの高さから胴にパラシュートを巻きつけて降下するという代物。浅草松屋の屋上に存在した土星を模したスカイクルーザー、飛行機が屋上からハミ出して飛んでいた…という飛行塔にも、ぜひ一度乗ってみたかったものである。
この原稿に手をつけようというとき、たまたまスカパーで観(み)た成瀬巳喜男の映画「おかあさん」(田中絹代主演)に懐かしい向ヶ丘遊園の場面が出てきた。駅前から豆電車が走り、目玉の空中ケーブルやウォーターシュートが紹介されている。昭和27年の作品だから、これらの装置が導入されたばかりの頃になる。そう、遊園地の時代は映画の黄金期ともほぼ一致している。本書に取り上げられた“消えた遊園地”の多くは、往年の邦画で眺めることができる。(白土健・青井なつき編著/創成社新書・840円)
コラムニスト 泉麻人
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【プロフィル】白土健
しらど・たけし 松蔭大准教授。
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【プロフィル】青井なつき
あおい・なつき 作家、生活研究家。

