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【週末読む、観る】(2)大槻義彦教授が熱く説く『子供は理系にせよ!』 (5/5ページ)
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移植の技術が進歩し、手術によって多くの命が救えるようにはなったが、倫理的問題は社会的合意に達していないまま。この世に貧富の差があるかぎり、自分の臓器を売らなければ生き延びられない貧しい人が存在するのは争えない事実である。また、中国で実際に行われている死刑囚からの臓器摘出のような、人権を軽んじた安直な臓器調達も、根絶はできないだろう。それなのに「救える命がある以上、移植手術は善である」という錦の御旗に押される一方。それが現状である。
耐え難い苦痛、刻々迫る死。それらから逃げたい一心で他人の臓器を奪う行為は、許されることなのか。たとえ善意による無償の提供を受けたのだとしても、その臓器を他者から「奪った」事実は免責され得ないだろう。しかしこの根本的な問いは、本書のいたるところに見られる、患者や家族の生々しい肉声にかき消される。
「(ドナーが)死刑囚かどうかは、結果だ(あらかじめ選べないので仕方がない)」「なぜ、死刑囚だといけないのか」「助かるならいくら(費用が)かかっても構わない」。生命の崖(がけ)っぷちに立たされた人間の本音である。さあこの言葉にどう答えますかと問われているようだ。
臓器とは「人間の体を構成する部品」以上のものであるはずだ。しかし、現在は技術論が先走っている。これは核兵器や生物兵器の問題と共通する、人類の隘路(あいろ)であろう。しかし、われわれは先に進まねばならない。移植医療に光を当て、その進路をひらこうとする著者の願いが強く伝わってくる。
(詩人 渡邊十絲子〈としこ〉)
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きむら・りょういち 産経新聞論説委員。
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