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【週末読む、観る(2)】『うつ病の真実』の著者に聞きたい、ほか (4/4ページ)
■大書評(3) 評・渡辺洋二(航空史家)
『中国的天空』上・下 中山雅洋著(大日本絵画・上4515円、下4725円)
中国の軍事航空の通史を記録した正確な本はない、というのが、われわれの常識だった。
日華事変〜太平洋戦争の中国大陸での航空戦を書くには、一方的で不正確と分かっていても、日本側の文献を主体にせざるを得なかった。中華人民共和国から資料が来るはずはなく、中華民国の台湾で調べようにも足がかりがない。
そんな状況の平成9年に、航空雑誌で著者が「中国的天空」の連載を始めたとき、驚きはすぐ期待に変わった。著者は、日本でフィンランドが国名しか知られていない時代に、その空軍がソ連空軍と戦い、いかに善戦したかを、外国人で初めて詳述した人物だからだ。きっと題名どおり中国の空の変遷を、誌面に展開してくれるだろう。そして期待は裏切られなかった。
長らくの連載の結実がこの2巻だ。上巻は中国の航空事始めの1909年から、日華事変で零戦が参入する40年まで。下巻が太平洋戦争を主体に、国民党政府が台湾へ脱出する49年までを扱う。上巻は27年前に既刊だが、一部が改訂増補されている。
通読すると、国民党と軍閥が対抗し、ヨーロッパ列強がからむ揺籃(ようらん)期から、満州事変、上海事変から第二次大戦の終結まで、つねに日本軍が大陸の空にあり、中国空軍史は抗日空軍史だとあらためて理解できる。
飛行機の生産手段を持たない空軍が、日本の兵力につぶされかかるとき、米退役軍人のシェンノートが顧問になる。彼の力量とその後の米軍の介入が、再建と制空権奪取にどうかかわるかが読みどころだ。
各国の資料の精査と、中、日、米の生存関係者への取材をバックに、よくこなれた筆で起伏ゆたかにつづられた、あまたの未知の事実。多量の写真も適切で珍しく、読者は軍事知識をさほど要しない。日本側の記述精度がいくらか甘いのは苦にならないだろう。
かつて著者が「かけらを丹念にひろい集めて」と書いた作業は、ここにまさしく成就した。
◇
なかやま・まさひろ 昭和11年生まれ。著書に『北欧空戦史』。

