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【週末読む、観る(2)】『うつ病の真実』の著者に聞きたい、ほか (3/4ページ)
■大書評(2) 評・沼野充義(東京大大学院教授)
『イメージのポルカ』近藤昌夫、渡辺聡子ほか著(成文社・2940円)
日本ではロシア文学はよく読まれ、研究書も多く書かれているが、ロシアの背後に広がる広大なスラヴ諸民族の芸術について、見晴らしを与えてくれるような本は希(まれ)だった。『イメージのポルカ』は「視覚芸術」という観点から、ヨーロッパの中でも実は大きな部分を占めている東欧・スラヴの世界に踏み込んで解説を試みたもので、その先駆的な意欲をまず歓迎したい。
本書は5人の著者による、わかりやすいリレー講義の形式で書かれている。第1講「教会とイコン」(渡辺聡子)では、独自の美意識を持つロシア正教の教会と聖像画(イコン)が、豊富な実例とともに論じられる。ロシア的美のいわば基本にあたる部分だ。第2講「シャガールはなぜ七本指なのか?」(角伸明)は、ユダヤ人画家シャガールのルーツを東方ユダヤ文化史に探り、同時にイコンが彼に大きな影響を与えていることも指摘する。第3講「カンディンスキーのモスクワ」(近藤昌夫)では、西欧美術の文脈で語られがちなカンディンスキーのロシア性が洗い出され、ロシアの民衆版画やイコン、故郷モスクワの影響の大きさが論じられる。
そして本書はジャンルを広げて、第4講「ロシアとチェコのアニメーション」(大平美智代)、第5講「人形劇と東西スラヴ世界」(近藤)と続き、「ヴィジュアル文化と音楽」と題された第6講(加藤純子)では一転して、視覚芸術や音楽が教育や公共の場で活用される可能性が検討されている。
個々の講義は十分に刺激的かつ啓蒙(けいもう)的だが、全体としてみると、あまりに広大な領域をいくつかの異なったジャンルの話題で点描して繋(つな)いでいるため、概観というよりは鮮やかなパッチワークといったふうだ(特に第6講は内容的に飛躍が大きく、違和感がある)。
ともあれ、スラヴの「民族の精神が凝縮した空間の力」(近藤氏のあとがきより)を示そうとした、その意気やよし。日本のスラヴ文化研究の視野の広がりを感じさせる本になった。
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こんどう・まさお 関西大教授。ロシア文学専攻。

