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【青雲の大和】(218)国威をもって (2/3ページ)
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丘のうえに造られた月城は、王宮のすぐ南にみえている。走れば一刻(十五分)ほどで行ける距離にある。しかし、高齢の女王を乗せている輿は、遅々として進まない。
王宮の南側のせまい街区をでて、ようやく月城までの中間あたりにきたときである。
女王の輿のまえを歩いていた文麻呂は、明活山城(めいかつさんじょう)から出撃してきた敵の先陣が野を駆けて、怒号しながら突進してくるのをみた。三十人ほどが皆、抜刀して白刃をかざしている。
女王をまもるべく配置されていた兵が、大きく包囲するように立ちむかうが、敵兵はそれを突破して女王の輿にむかってくる。
「走れ、かまわぬ、走れ」
馬上、金春秋が剣で月城を指して叫んだ。もはや高齢の女王の身を案じている余裕はなく、輿を担ぐ四人の兵は敵に追いたてられるように駆けだした。
文麻呂も走った。武器をもたず鎧(よろい)もない身で、戦闘にまきこまれたら、それまでである。
独り駆けつづけに駆け、月城の丘に達してふりかえると、東側の雑木林のなかから、あらたに敵兵数十があらわれ、女王の輿に殺到するところだった。
輿のまわりを固める兵が鉾をかまえるなかへ、敵兵が突っこんでいく。林間からはつづけざまに矢があびせられ、女王をまもる兵がばたばたと倒れている。