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【書評】『江戸の捨て子たち』沢山美果子著
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■津山藩に赤ちゃんポスト構想
昨年5月に、親が育てられない赤ちゃんを匿名で引き受ける通称「赤ちゃんポスト」が熊本市の慈恵病院で設置され、大きな話題となった。無責任な親が増えているというのに、育児放棄をさらに助長するのではないかという反対派と、とにかく赤ちゃんの生命を守るのが先決という肯定派との間で、連日メディアで激論が交わされた。しかし、改めて考えてみるとその“非難の根源”は一体何だったのだろう。
著者によるとそれは「子供の生命を守る責任は何よりも実の母にあるという現代社会に根強くある倫理観」が大きく影響しているのではないかという。
それでは数百年前の江戸時代に目を転じてみるとどうだろうか。
飢饉(ききん)など今よりさらに厳しい貧困に悩まされていた江戸時代では、裕福な庄屋の軒下などに、子供を置き去りにする捨て子は、実は許容されていたのである。「家」の存続のためには、血縁でない子供を養子として、あるいは労働力として求める子供観が存在していたのだ。
しかし、そういった地域社会による相互扶助的な捨て子救済システムも、幕末にはやがて破綻(はたん)をきたしてくる。そういった背景のなかで、津山藩では「赤ちゃんポスト構想」が出され、堕胎や間引きから子どもを守ろうという動きが出てきたのである。資金面から実現には至らなかったようであるが、これは地域社会の崩壊が叫ばれて久しい現代にもつながる問題をはらんでいる。本書は、捨て子問題を新しい角度から考える一冊といえよう。(吉川弘文館・1785円)
吉川弘文館編集部 永田伸

