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【青雲の大和】(216)国威をもって (1/2ページ)
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眼に笑みがある。よく肥えた金春秋(きんしゅんじゅう)のゆたかな顔は、迫りくる危機をまったく感じさせない。
新羅(しらぎ)王室が反女王派の攻撃をうけ、あすにも廃されるかもしれないという瀬戸際にあって、思わず反感をおぼえるほどの態度だが、すぐに文麻呂(ふみのまろ)には、その理由がわかってきた。
この危急にさいして金春秋は、折よくとびこんできた大和の使者の協力をあおぎ、反女王派の動きを大和の国威をもって抑えてもらおうという思惑を隠しもっていたのである。
「いかがであろう、貴官にはたいへんご苦労をおかけすることになるが、いま一度、明活山城(めいかつさんじょう)にもどっていただけないだろうか」
金春秋は笑みを絶やさず、ゆったりと話した。
「山城にもどって、なにをせよといわれるのか」
文麻呂には、なおその意図がわからない。
「あちらの者とわたしが話しあえるよう、貴国の力でなかをとりもっていただきたいのであるが」
「それはできない」
文麻呂は思わず声を高めた。
「いや、できないというより、もはや手遅れである」
「そこをなんとか、数日だけでも抑えていただきたいのである。われわれにはできなくても、大国の力をもってすれば可能でありましょう」
貴国という儀礼的な言い方は、このとき大国にかわっていた。大和の使節団にたいする新羅王族の、なりふりかまわぬ追従(ついしょう)である。
「じつをいうと、わが大使、副使は明活山城に幽閉されている。こちらの動きによっては殺害されるかもしれないのです」
文麻呂がはじめてその事実を明かすと、金春秋はまたも、場違いな笑みをうかべた。
「なんと大国の大使、副使が幽閉されているといわれるか。それはなんとしても、お救いせねばなりますまい」