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【青雲の大和】(215)国威をもって (2/2ページ)
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兵部(へいぶ)の次官である守勝が、そこをどうやりくりしたのか、二百人ほどの王宮守備隊を編制しおえて、文麻呂をよびにきたのは、その日、夕刻近くになっていた。
「ただいまから、大和の使節団代表として金春秋(きんしゅんじゅう)閣下に会っていただきたい」
守勝はそう告げた。
金春秋は王族の実力者である。いま、百済に攻めこまれ苦境にある新羅を背負って立つのは、この人物しかいないことを文麻呂は知っている。
四年まえ、文麻呂が新羅へ派遣されてきたちょうどそのとき、金春秋は百済に対抗するため、仇敵(きゅうてき)の高句麗へ救援をたのみに行き、そのまま幽閉されてしまうという事件があった。
義兄(妻の兄)である大将軍、金★信(きんゆしん)が三千人の決死隊をひきいて高句麗へ乗りこんでいき、かろうじて脱出してきた金春秋を抱きかかえるようにして帰ってきたのだったが、新羅国民のそのときの熱狂ぶりは、いまも文麻呂の眼に焼きついている。金春秋はいわば新羅の希望の星なのである。
王宮に緊急に動員された兵士があわただしく行き交うなか、文麻呂が守勝に導かれて会見の場へでむくと、金春秋は近習の者二人をしたがえて待っていた。
一段高くなった広間の主座に、黒光りする豪華な毛皮が敷かれている。
「よくおいでくだされた」
金春秋は主座で立ちあがり、文麻呂がとまどってしまうほど明るい朗々とした声で話しかけてきた。(●=田へんに比、★=庚の真ん中部分が臼)