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【青雲の大和】(215)国威をもって (1/2ページ)
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守勝(しゅしょう)は平たい土偶のような顔をこわばらせ、文麻呂(ふみのまろ)をじっとみつめている。
−−●曇(ひどん)挙兵。
文麻呂がもたらしたこの重大情報におどろきながらも、どこまでが本気かさぐっているようすである。
「まだ信じられないのか。信じられないなら、すぐ明活山城(めいかつさんじょう)に兵をだしてしらべてみよ」
四年まえ、文麻呂が蘇我(そが)の指令で新羅(しらぎ)に派遣されてきたとき、外事を担当していたこの男となんどもやりあっているので、気心はわかっている。
「で、貴官はいままで、どこにおられたか」
「いわずと知れたこと、その明活山城にいた」
「なぜ、あのような山城に」
「そんなことはあとにしろ。いま、緊急に兵を動かさねば危ないというのが、わからんのか」
文麻呂が声を荒らげると、はじめて守勝はあわてだし、部下になにかを命じたあと、小走りに王宮の奥へ消えた。
明活山城にこもる反乱軍の兵数を文麻呂は正確につかんでいないが、おそらくいまは四、五百人にふくれあがっているとみなければならない。守勝らは、それに対抗できるだけの兵を王宮にあつめなければならないのである。
新羅の正規軍はいま、西方の山岳地帯で百済(くだら)の軍勢と戦っている。このところにわかに勢いをもりかえした百済は、建国以来といわれる強力な部隊を国境地帯に投入し、ここ八十年来、事実上新羅領となっていた旧任那(みまな)の地の大半をうばいとった。そのうえで、厳冬期にあるにもかかわらず、新羅領内ふかく攻めこんできているのである。
もしここで、反乱鎮定のため新羅が前線から部隊をひきぬくなら、新羅の王国そのものが百済軍の侵攻で滅亡しかねない状況にある。