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【青雲の大和】(214)国威をもって (1/2ページ)
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夜明けの道を駆けながらふりかえると、明活山城(めいかつさんじょう)のうえにひろがる空が、闇をぬぐうように白みはじめていた。山城からの道を透かしみたが、追っ手の姿はない。
西方に新羅(しらぎ)の王宮が黒々と沈んでみえている。もう一刻の余裕もない焦燥に追いたてられ、文麻呂(ふみのまろ)は王宮めざして、厳寒のなかを走りつづけた。
●曇(ひどん)、廉宗(れんそう)がひきいる反女王派の反乱部隊は、きょうにも決起して徳曼(とくまん)女王の王宮に攻めこむかまえである。
対して女王側がまだその動きをつかんでいないのは、明活山城でとらえられた王宮の役人の証言からもあきらかだった。
このまま放置すれば、●曇、廉宗は王宮を乗っ取り、女王を廃して唐から新王をむかえる策謀を、やすやすと実現してしまうことになる。大和の使節団としては、なんとしてもそれを阻止しなければならない。
大使、高向玄理(たかむこのくろまろ)と副使、中臣押熊(なかとみのおしくま)は反女王派によって、山城に幽閉されてしまっていた。
自由に動けるのは、蘇我(そが)派を名乗り、●曇らにとりいった文麻呂だけである。山城脱出が可能になったのは、その苦肉の演技のおかげだった。
明活山城から王宮までは、わずかの距離でしかないのを文麻呂は知っている。走れば二刻(三十分)ほどで行きつけるはずである。
四年まえ、文麻呂は蘇我勢の一員としてこの地を訪れており、新羅側との交渉のためなんども王宮の門をくぐっている。文麻呂にとってはこのあたり、いわば通いなれた道だった。
「われは大和の使節団の一員である。門をあけよ」