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【青雲の大和】(213)新羅の砦 (2/2ページ)

2008.5.15 23:01
このニュースのトピックス青雲の大和

 というものだった。

 民族の自立と自決を放棄し、大国に媚(こ)びへつらう売国の論法ではあるが、きいていると奇妙な説得力がある。

 それに飛びついたのが、●曇一派にとりいるよう玄理に命じられている文麻呂(ふみのまろ)だった。

「ただいまの閣下のご高説に、わたしは感銘をうけました。はっと眼がさめた思いでございます」

 玄理が苦い顔をしたのは、むろん文麻呂を送りこむための演技である。

 文麻呂は調子に乗って、どんどんと言い募っていく。

「じつをもうしあげると、大和におきましてもそのような考え方がありまして、蘇我(そが)派に属していましたわたしは、そちらから推されて貴国へきておるしだいでございます」

 まるっきりのでたらめだが、蘇我に属していた、というところだけは事実である。文麻呂が蘇我勢を中心とした吉野(よしの)の乱にくわわったのは、つい一年余りまえのことである。

 廉宗(れんそう)がききとがめて問い返した。

「蘇我は亡んだときいたが、まだ残っているのか」

「残っているどころではありません。重臣の最高位というべき右大臣(うだいじん)は、蘇我の当主ですよ、廉宗どの」

 廉宗はこれで文麻呂を信用したようだった。蘇我が新羅と賄賂(わいろ)によって癒着してきたのは事実であり、文麻呂も同類とみたのである。

「よし、それでは以後、この者を倭(わ)国の代表としてあつかおう」

 ●曇がそういったとき、文麻呂は玄理をみて、わずかな眼の動きで合図を送ってきた。

 玄理もまた、険しい表情をくずさぬまま、眼の動きで「了解」の意をつたえた。(●=田へんに比)

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