ニュース: 文化 RSS feed
【読む、観る(1)】花田紀凱の週刊誌ウオッチング「パンダ“貸与”で喜んでいる場合じゃないだろう」、ほか (3/5ページ)
このニュースのトピックス:文学・書籍
フランス料理を世界遺産に! 2月、フランス政府が正式にユネスコに登録申請したと報道されました。料理はその国特有の文化です。しかし「料理は芸術である」とテーゼを掲げた瞬間、存在価値は国境・民族・習俗を超え、既成の概念をくつがえし新しい味を求めることに向かいます。
ガニェールは日本にも支店を持つ3つ星シェフ。ティスは世界で初めて料理に化学を持ち込み「分子美食学」を提唱した物理化学者です。スペインの「エル・ブジ」のフェラン・アドリアにも影響を与え、著作も多数、日本でも講演を行っており、新しい料理の担い手として知られています。
以前より、2人は新しいレシピを模索すべく、フランス料理にこだわらず研究を積み重ねてきました。ガニェールのサイトには共同で考案した料理を発表しています。本書はその成果を超えて「定番料理はなぜおいしいのか」という根本的疑問から始まります。
ティスが途轍もないテーマを出題すれば、ガニェールが想像を絶するレシピを提示する丁々発止のやりとりがユニークです。美学・化学・哲学・数学・音楽・生物学など人類の知の所産を渉猟しながら「料理とは何か」を極限まで探求した前代未聞の料理コラボレーション(共同制作)となっています。
「料理は芸術である」「素材の味だけに頼っては何も生まれない」という共通の信念で結ばれた2人は「おいしいだけで満足=思考停止してしまう」私たちを挑発し、かつ料理が無限の可能性をはらむ最も身近な無形文化であることを教えてくれます。
(中央公論新社書籍編集局 登張正史)
■書評倶楽部 野口健(アルピニスト)
『すべては消えゆくのだから』ローランス・タルデュー著、赤星絵理訳(早川書房・1575円)