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【読む、観る(2)】中国の赤い皇帝描く『トウ小平秘録』ほか (4/5ページ)
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だが、私は引きこまれた。物語の世界というより、丸山健二が描こうとしている「古典」の世界に。そう、この小説は古典なのだと思う。舞台が室町時代だからではない。丸山は古典を書こうとしている。逆に言えば、近代文学が蓄積してきたツールをいったん破棄して、それ以前の時代に連綿と続いていたはずの文章に自分の文体を接続しようとしているのではないか。だからこそ会話を示す鍵括弧など不要なのだ。
孤独な営みだと思う。だが、ポップスばかりがもてはやされる時代に、ベートーヴェンに比肩し得る作品のクオリティは、正当に評価されるべきだろう。
読者は、室町という時代を無名丸とともに駆け抜ける。だが、それが歴史上の時代だとは少しも思わないだろう。貧富の格差に苦しみ、非道な殺戮(さつりく)が繰り返される社会を、過去の遺物として冷静に眺めることは誰にもできはしない。丸山の想像力は現代から飛翔しているのだ。
そして読後、私たちは小説という文学の形式が何よりも言語を用いた芸術なのだ、ということを改めて確認させられる。リズムを保ち、言葉を積み重ねていく芸術の力を、まざまざとみせつけてくれる快作。
(文芸評論家 陣野俊史)
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まるやま・けんじ 昭和18年、長野県生まれ。41年、「夏の流れ」で文学界新人賞、芥川賞。著書に『落雷の旅路』『貝の帆』など。
■著者に聞きたい 諸田玲子さん
『遊女(ゆめ)のあと』(新潮社・1995円)
「江戸時代を舞台にした人情もの時代小説というと、深川など江戸の町を舞台にしたものが多い。でも地方にもさまざまな立場の人がいて、さまざまな暮らしがある。そんな、あまり知られていない、地方を舞台にした人情味のある時代小説を書いてみたかったんです」