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【読む、観る(2)】中国の赤い皇帝描く『トウ小平秘録』ほか (1/5ページ)

2008.5.12 15:45
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■伊藤正著『トウ小平秘録』上・下(扶桑社・各1785円)

 中国の赤い皇帝・トウ小平を語ることは、今日の巨大な問題国家のすべてを論ずるに等しい挑戦的課題だといえよう。共同通信社そして産経新聞社の記者として、文化大革命で打倒されたはずのトウ小平が奇跡的な復活を遂げ、再び失墜した1976年の第1次天安門事件を現場取材し、さらに本来は改革派であるはずのトウ小平が強権を発動して民主化運動を武力制圧した1989年の第2次天安門事件を目撃している著者は、トウ小平が直面した権力闘争、改革・開放の総設計師としての全体像を詳細に描いている。

 トウ小平についての著者の基本的視点は、「経済に関しては、社会主義の枠を突破する改革派だったが、政治に関しては確固たる保守派だった」というものである。そしてこの点こそが、トウ小平論のもつ今日性であり、中国社会が当面している深刻な矛盾である。

 本書は『産経新聞』紙上で平成19年2月から今年2月まで連載された「トウ小平秘録」を本にしたものであるが、本書の最大の特色は、トウ小平に関する膨大な資料を収集し駆使して、きわめて実証的にトウ小平の人間像や苦悩、さらには毛沢東、周恩来、林彪(りんぴょう)、華国鋒、江青ら「四人組」、胡耀邦(こようほう)、趙紫陽(ちょうしよう)、江沢民ら中国共産党首脳との複雑な政治的・人間的関係を解きほぐしていることである。

 私自身は文化大革命開幕期の1966年秋、孫文生誕百周年記念大会で周恩来総理が「毛主席万歳!」を絶叫して明らかに壇上の劉少奇とトウ小平を批判したときのトウ小平の復讐心に満ちた表情が今でも脳裏に焼きついているが、著者は上巻では天安門事件、南巡講話、文化大革命と遡り、下巻では毛沢東の死から最近の「先富論」の遺産までを丹念に分析している。

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