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【書店員オススメ 連休に読みたい本】『怖いくらい通じるカタカナ英語の法則』など
■池谷裕二著『怖いくらい通じるカタカナ英語の法則』(ブルーバックス・1050円)
何と私たちの脳は9歳以降になると新しい言語を覚える能力が急速に低下するらしい。つまり8歳まで英語の少ない環境であればRとLを区別する回路は形成されず日本人なら日本語に反応する脳回路になってしまう。しかし、それ以降でもやり方次第で十分通じる英語が話せるという。
『海馬』や『進化しすぎた脳』といったロングセラーを出している脳科学者の著者が、実際の海外生活で得た正しい読みの振り方によるカタカナ英語。読んでも発音してみても納得の内容となっている。
「アイガーレッ=アイガットイット」。わかったぞ!という具合。
〈広島・紀伊国屋書店広島店 藤井美樹〉
■小山田咲子著『えいやっ!と飛び出す あの一瞬を愛してる』(海鳥社・1680円)
24歳で夭折(ようせつ)した著者のブログを基にした書籍ですが、ただのブログ本ではなく、著者の才能に深い感動と驚嘆を覚えさせられました。日常の何気ない一コマも彼女にかかればかくも豊かな意味を持っているのかと再認識させられたことがとてもうれしく、しかし、もう彼女の新たな言葉を聞くことができないことがとても悲しい。
表紙が地味、地方出版社という販売する側としては「売りにくい」本ですが、そんなギャップを跳ね除けてでもぜひ皆さんに読んでほしい本です。手にとってもらえれば絶対あなたの胸に届く言葉を見いだせるはずですから。
〈兵庫・福家書店神戸店 坂本宣〉
■佐藤直樹著『暴走する「世間」』(バジリコ・1575円)
「空気を読め!」って嫌な言葉だ。何かに見張られているような気分になる。空気のように自分のまわりにあるけれど、当たり前すぎて意識できない。でも私たちの行動や考えを縛っているものが「世間」。
私たちにお中元やお歳暮を贈らせているのは世間。不祥事を引き起こしたときに「お騒がせして申し訳ない」とわびるのも世間。いじめを助長するのも世間なら、鬱病(うつびょう)も世間の病。じつは日本に「社会」(とそれを構成する個人)は存在せず、代わりにあるのは「世間」だという。私たちの日常のあらゆる行動原理を根底から揺るがす過激な学問、それが「世間学」だ。
〈東京・往来堂書店 笈入建志〉
■須原一秀著『自死という生き方』(双葉社・1890円)
平成18年4月、一人の哲学者が縊死(いし)した。それは、「責任を取って」でも「世をはかなんで」の自死でもなかった。
自死決行に先立ち彼が認めた遺書、否(いな)、遺著である本書によると、「敬意すら払われてよいかもしれない自死がありうる」のである。それは「平常心で死を受け入れるということは本当に可能か? それはどのようにして可能か?」という哲学研究者に残された問いへの答えであり、著者の自死決行は、本書とワンセットとなった一つの哲学的プロジェクトであった。「哲学」とは何か、「書物」とは何かという問いの枠組みを、根底から揺さぶる書。
〈大阪・ジュンク堂書店大阪本店 福嶋聡〉
■レイ・モイニハン、アラン・カッセルズ共著『怖くて飲めない!』(ヴィレッジブックス・798円)
薬害がつい最近も問題になる中、この本が文庫になって入ってきました。内容はアメリカを舞台とした、製薬会社の利益追求のための活動を詳細にリポートしたノンフィクション。
「チューインガムを売るように、健康な人々に薬を売る」ために世界的な製薬会社が行っている活動にはあぜんとするばかりです。病気を創造し大宣伝することで健康な人が一夜にして「病人」へ。その人々へ、必要性がなくても薬は売られ、健康保険が破綻(はたん)してゆく。M&Aが頻繁におこなわれる今、本書の内容は他国のことと言い切れるかどうか。自分自身の健康観をも考えさせられました。
〈福島・リブロ郡山店 馬田尚宏〉
■長新太著『ブリキのおまるにまたがりて』(河出書房新社・1575円)
享年77で、平成17年にこの世を去った、日本を代表する大絵本作家、長新太のナンセンス絵本エッセー(?)待望の復刻版! のっけからタイトルの「おまるにまたがりて」というのは抵抗がある人もいるだろう。さりとてひかれた人も少なくはないはずだ。そんなおバカな大人に向けた長新太ワールド満載の一冊。
中身は戯曲ふうの作品から著名人へのインタビュー、おケツにもちろんおまるありの、なんとも滑稽(こっけい)な話ばかり。最後に本人へのインタビューもあるが、結局話の中心は“おケツ”へと…。真面目なのか不真面目なのか(笑)。誰もマネのできない奇書である。
〈青森・成田本店しんまち店 植村聡子〉
■高橋みどり著『ヨーガンレールの社員食堂』(PHP研究所・1680円)
スタイリストの高橋みどりさんが、「ヨーガンレール」という会社の、社員食堂のメニューや、そこで働く人たちのことを1年間記録し、一冊の本にしてくださいました。
そこには、「社員食堂」というイメージからは程遠い、それはそれはすてきな、“日替り定食”の写真が並んでいます(しかも、1食500円。安い!)。
ただ毎日繰り返される、あたりまえのことの大切さ、ちょっぴりお肉も食べたいけれど、自分や愛する人たちが、ずっとずっと健康でいられることこそが、幸せの基本なのだ、とヨーガンレールさんと、この本は教えてくれています。
〈大阪・天牛堺書店光明池店 三山洋子〉
■高山なおみ著『おがずとご飯の本』(アノニマ・スタジオ 1680円)
料理のレシピがまとまった本は毎日のように出版され、星の数ほどあるけれど、料理を作ること、その周りにある感情や空気を抱きかかえるような温かさまでも、この本からは感じることができます。
カレー、肉豆腐、いわしの梅煮。高山なおみさんが日々作っているご飯とおかず。メニューもレシピも材料も気取ることのないふつうのおかずだけれど、ひとつひとつに高山さんの言葉があって、料理も本も、人がつくっているという当たり前のことに気づき、そっと寄り添うように毎日に役立ちます。お料理初心者にもおすすめの、ずっと持ち続けたい一冊です。
〈東京・青山ブックセンター本店 新保奈緒〉
■手塚治虫著、谷川彰英監修『「いのち」と「こころ」の教科書』(イースト・プレス 1000円)
例えば子供たちに、命が大切であるとか、地球環境を守ろうとか、平和が大切だと伝えるのは、意外に難しい。人間として必要な教育なのに「いのち」や「こころ」の大切さを語ると説教じみてしまうものだ。
ところが、この本に収録された8つの手塚マンガは読みやすい上に、内包するテーマが驚くほど深く、手塚本人の文章は一つもないが雄弁である。
悲惨な戦争や、汚れた地球、愚かな人間の姿を描きながら、それでも「人間には…希望があるよ」と主人公の一人は言う。凄惨(せいさん)な事件が相次ぐ現代に、「人間らしくあるための」教科書といえる一冊。
〈兵庫・紀伊国屋書店神戸店 佐藤綾花〉
■乙一著、荒木飛呂彦原作『The Book』(集英社・1575円)
荒木飛呂彦のコミック『ジョジョの奇妙な冒険』を乙一がノベライズ。原作第4部を舞台に吉良事件後のエピソードを描く。
杜王町で起こった奇妙な事件。発見された死体は密室であたかも交通事故に遭ったかのようだった…。
原作の主要な人物も登場するが、物語の大半は小説のオリジナルキャラクターを中心に進んでいき、原作とはまた違ったダークな世界観を感じさせる。特に作中、女性が狭い空間に閉じ込められる描写は著者の真骨頂。息が詰まりそうだ。ラストの物悲しい終わり方といい、コミックとはまた別のJOJOワールドを堪能させてくれる。
〈和歌山・宮井平安堂本店 吉川彰裕〉
■石川直樹著『POLAR』(リトルモア・3045円)
冒険家・石川直樹が、世界地図を眺めただけでは決して見えてこないリアルな北極圏を、彼自身の手で撮り収めてきた10年間の旅の軌跡。
著者が旅して出合った北極圏が淡々とそこにあり、極寒の地の、どこか神秘的で、暖かさを感じる写真の数々。地球温暖化で溶け出した物悲しげな氷や、雪で覆われた静かで壮大な大地と、そこにある街の光、カラフルな家、穏やかでありながらりんと生きる人々の姿との対比がとにかく美しい。
行ってみたい衝動だけで、旅に出てしまうという著者の、大胆で繊細な心が全面につまっています。
〈東京・ブックファースト神田駅前店 渡辺裕子〉
■勝間和代著『お金は銀行に預けるな』(光文社・735円)
普通の日本人からすると、この本のタイトルは、おやっと思うものです。日本人にはお金のことをあからさまに話すのは恥ずかしいという美学や、同じお金を使うにしても運用した1万円より、汗して稼いだ1万円の方が尊いという価値観があり、金融に対して敬遠しがちです。
ですが、日本は日本と同レベルの経済力を持つ国に比べ金融知識の浸透が遅れているといいます。そのルールを知らなければ年金問題などで足元をすくわれかねません。今後は、銀行に預けるだけでなく自分で資産を管理していかなければならない時代になったといえるのかもしれません。
〈埼玉・三省堂書店大宮店 佐藤公治〉
■伊藤比呂美著『あのころ、先生がいた。』(理論社・1260円)
これまで何人の先生に教わってきたのかなと思う。あのころ、勝手に嫌ったりあだ名で呼んだり、からかったり、好きだったり、尊敬していたり…。学校生活の何分の一かは先生の話題だったはずなのに、今となっては思いだすこともほとんどない。
この本を読んで、久しぶりに自分を教えてくれた先生を思いだした。苦手な物理も、嫌いだった体育も、得意だった国語も、昨日のことのように、次から次へと思いだせる。子供向けと思わずにぜひ学校からだいぶ離れてしまった大人に読んでもらいたい。遠い昔も昨日のように思いだすことができるはずです。
〈兵庫・リブロ阪神西宮店 浦田麻理〉
■TBS「イブニング・ファイブ」編『余命1ヶ月の花嫁』(マガジンハウス・1470円)
本書は昨年5月に放送され、反響のあった番組の書籍化です。乳がんと闘い、24歳という若さで亡くなった長島千恵さんの話です。
厳しすぎる現実と健康へのありがたみの意識を感じさせられました。「余命1カ月」。人は1カ月でいったい何ができるのでしょうか。千恵さんは、残された時間を自分らしく笑顔で生きました。「病気とは自分がなるまで他人事。なってからでないと健康のありがたみはわからない。病気になってからでは遅いというのをわかって、早いうちにふせぐことが大事」とメッセージを残しています。何気ない日常の素晴らしさを教えてくれる一冊です。
〈北海道・紀伊国屋書店札幌ロフト店 小原謙司〉