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【産経児童出版文化賞】大賞『ぼくらは「コウモリ穴」をぬけて』ほか、受賞7作品を紹介 (1/4ページ)
このニュースのトピックス:美術・芸術
第55回産経児童出版文化賞が決定しました。4511点の中から大賞に選ばれた『ぼくらは「コウモリ穴」をぬけて』をはじめ、受賞7作品の選評を掲載します。
■大賞 広瀬寿子作、ささめやゆき絵『ぼくらは「コウモリ」穴をぬけて』(あかね書房・1155円)
春。小学3年生の「ぼく」の家族は、いとこの、つーくんを引き取る。「ぼく」より一つ年上のつーくんは、突然におかあさんを亡くしたばかりだ。つーくんは、さっそくサッカークラブに入り、活躍しはじめる。おかあさんのことは、思いださないのかな。
「ぼく」は、つーくんを自分の秘密基地に連れて行く。秘密基地は、コウモリの住んでいる洞穴だ。奥には、コウモリたちの産室があり、やがて、次々と赤ちゃんコウモリが生まれる。
コウモリ穴の突き当たりの壁に、大きな三角の窓が開いている。窓の下には、川が流れている。窓のむこうは、いつか、つーくんが夢で見たのと同じ景色で、そこには、つーくんのおかあさんがいるはずなのだ。つーくんは、「ぼく」に「行こう」という。
母を亡くした少年が、どんなふうに、その死を受け入れていくことができるのか。作者は、それを「ぼく」という、もう一人の少年の視点から描き、そのことによって、物語は、深い奥行きをもつことになった。少年たちの心のひだによりそう、しなやかな文体と、ささめやゆきの挿絵が、作品をあざやかなものに仕立てている。
(武蔵野大文学部教授 宮川健郎)