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【週末読む、観る】94歳の音楽評論家・吉田秀和さんに聞く (3/4ページ)

2008.5.4 08:31
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【大書評(2)】

『AALTO』斎藤裕著(TOTO出版・4935円)

 「北欧モダンデザインの父」といわれるフィンランドの建築家、アルヴァ・アールト(1898〜1976)が作った10の住宅を選び、写真、スケッチ、設計図、文章で解説していく。建築家である著者ならではの精緻(せいち)な文章で、建築解説本としての充実度は高い。

 とはいえ、この本は「資料集」という感じがしない。著者は、拳を握りしめたり指を出したりする「フィンガーフォーム」と表現しているが、アールトが好んだ有機的な形が、人を穏やかな気持ちにさせるということもあるだろう。静謐(せいひつ)な自然を見せるフィンランドという土地のせいかもしれない。が、一番の理由は、著者の見る目の優しさであろう。

 この本を開く前、私は少し怖かった。文化保存のための家が苦手なのだ。

 人のいない死んだ家。

 人のいる生きている家。

 この差はどうしても逃れられない。人が住まなくなると、とたんに家は生気を失ってしまう。家具や小物も同じ。人に使われなくなり、ただ置かれるだけ、特に博物館に収蔵されてしまうと、本来あるべき生活の匂(にお)いを失う。

 おそらく著者もそこを意識したのだろう。周囲の木々、花、雪、湖、そして空。写真にその場の臨場感を、空気をも写そうとしている。例えば夜、窓から明かりの漏れる「ヴィラ・シルツ」の写真は、そこに人がいたころを彷彿(ほうふつ)させる。

 今、人はいないが死んではいない家の形態とも考えられる。フィンランドではサマーハウスを持つ人が多く、本書に登場する物件も別荘として作られたものが多い。休んでは、また息を吹き返す。そんな気配もある。また、「エンソ・グッツァイト社宅」は今も実際に住宅として機能している。ここには本当に住んでいる人の息づかいが感じられる。アールトの住宅は死んではいなかった。

 カバーを外すと、明るい水色の布張りになっている。これはフィンランドの空の色だ。優しく穏やかな夏の光を思い起こさせる。

(デザインジャーナリスト、渡部千春)

 さいとう・ゆたか 建築家。昭和22年、北海道生まれ。作品に「好日居」など。

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