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【週末読む、観る】話題の本『B型自分の説明書』、やなせたかしの恋愛小説評ほか (3/4ページ)

2008.5.4 08:30
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【大書評(1)】

小手鞠るい著『レンアイケッコン』(世界文化社・1575えん)

 第1章の「サムシング・ブルー」を読みはじめて直(す)ぐに絵本のような小説だと思った。

 主人公の八木(やぎ)雪香(ゆきか)のニックネームはシロヤギ。アメリカ留学中にマンハッタンのブライアントパークで「夢見るベンチ」と名づけているベンチに先客があって絵を描いている。彼のニックネームはクロヤギである。運命的な巡り逢(あ)いからクロヤギとシロヤギはやがて恋に落ちる。ほとんどこれはメルヘンである。日本に帰ったシロヤギはクロヤギが忘れられないまま不本意なお見合いをする。当日お見合いの相手は約束の時間におくれ更(さら)にいっしょにいった映画館で眠りこけてしまう。もちろんお見合いは失敗。

 このさりげない第4章「遅れてきた人」は小説のラスト近くになって意外なかたちで再登場してきてもう一度遅れる。これ以上書くとこの巧妙な小説の秘密のドアを開けてしまうことになるので書けない。

 最近の恋愛小説に多いベッドシーンはないのに甘く切なく美しい。激情は知的に抑制されている。『エンキョリレンアイ』『サンカクカンケイ』の片仮名タイトル3部作の中ではこの完結編が一番若くういういしく小説の完成度が高い。

 物語の最初のエピグラムは実在する絵本『僕への小さな旅』(ポプラ社)から引用されている。

 「でも君はずっとここでぼくを待っていてくれたんだね」

 この言葉の意味はこの小説の最後で鮮明になる。

 多用されているメールの文章はほとんど詩に近い。

 ぼくは作者が川滝かおりの本名で「詩とメルヘン」に詩を投稿していた時代に編集長をしていたので小手鞠るいのペンネームで小説をかきはじめてもやはりこの作者の本質は詩人なのだと思っている。

 だから言葉が美しい。リズムがある。

 この小説の登場人物は全員善良で全員美しい。

 これだけ荒涼とした時代に、ほとんど奇跡的に純真な恋愛小説を読むことができるのはうれしい。

(絵本作家 やなせたかし)

 こでまり・るい 岡山県生まれ。『欲しいのは、あなただけ』で島清恋愛文学賞。

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