ニュース: 文化 RSS feed
【書評】『幸之助論』ジョン・P・コッター著
このニュースのトピックス:文学・書籍
■アメリカ人の一味違う評伝
松下幸之助の人生は、仕事においても私生活においても、常に悲しみと喜び、蹉跌(さてつ)と成功、不安と夢、恐怖と希望が拮抗(きっこう)しつつ同居していた。一つ一つの節目をくぐるたび、そこに感情が姿を現さないはずはない−−。
本書『幸之助論−「経営の神様」松下幸之助の物語』の著者、ジョン・P・コッター・ハーバード・ビジネススクール名誉教授は、松下幸之助の生涯を丹念に調べ上げ、分析しました。
経営者とは、積極性、論理性より、むしろ一見マイナスに見える面や感情に彩られた機微が大事なのだという著者は、幸之助を公人、私人、心の世界という3つの視点でとらえます。そして、どんなに考え尽くしても終わりはないという意識で前進し続けた幸之助の驚くべき成長と再生の能力を描き出しました。
読んでいて息苦しくなるほどの苦境が立て続けに出てきますが、それがかえって「成功よりも苦難が人間を強くする」という本書のテーマを随所で繰り返し、ライト・モチーフのように感じさせます。
偉大な経営者に対しても、偉大となるまでのプロセスと、存在そのものを神格化しないのがコッター流です。日本人ではない著者だからこそ書けた記述(幸之助が癇癪(かんしゃく)持ちだったことや愛人の存在など)も多く、従来の幸之助伝とは一味違う評伝です。
神戸大学大学院経営学研究科の金井壽宏教授が、本書が、経営学分野における有用な分析的伝記であることを解説します。(金井壽宏監訳、高橋啓訳/ダイヤモンド社・1890円)
ダイヤモンド社ハーバード・ビジネス・レビュー編集部 榎本佐智子

