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【人、瞬間(ひととき)】あの時代 作家・田辺聖子さん(80)(下) (1/2ページ)
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大阪弁で新しい恋愛小説
生家である田辺写真館が焼失した終戦から数年後、田辺聖子は女子専門学校を卒業し、19歳で金物問屋の事務員となった。父の病死で、弟妹の学業を続けさせるため家計を支えていた田辺は、小説家という少女のころからの夢を胸に、大阪文学学校や同人誌で修業を積んでいた。
「昭和30年代は戦後の高度経済成長期で、外で働く女たちも増え、みんな読み物に飢えてたころなのね。小説雑誌がどんどん刊行されて、そういうところに登場する小説家を文壇が待っててくれたの。新しい小説家を待望する時代だった」
通勤電車の中で読める文庫本が登場し、若者や女性が好む恋愛小説、ユーモア小説、大衆小説が世の中に出てきたころ。
「これなら私にも書けるかもしれない。今のうちにきちんとした小説を書いて、何が何でも拾い上げられたい」と、しゃかりきになっていた。
39年には、「感傷旅行(センチメンタル・ジャーニイ)」で、第50回芥川賞を受賞。「本当は純文学の芥川賞より、もう一方の直木賞をもらいたかったの。当時はみんな純文学一辺倒だったけど、私は、もっと砕けた普通の女の子や男の子が出てくる大衆小説を書きたいと思ってたから」

