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【週末読む、観る】(5)『のぼうの城』「弱者の誇り」描く時代小説 (3/4ページ)

2008.4.27 09:31
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 ■『ルインズ』(上)(下)スコット・スミス著、近藤純夫訳(扶桑社ミステリー・各770円)評・北上次郎(文芸評論家)

《ディテール鮮やかなホラー》

 『シンプル・プラン』以来、長らく沈黙していたスコット・スミスの久々の新作だ。やっぱりうまいな、スミス。読み始めたらやめられなくなる。

 話はシンプルだ。メキシコにやってきたアメリカ人の若い2組のカップルが、ギリシャ人とドイツ人の観光客と知り合うのである。そのうちに、ドイツ人のマティアスが出かけたまま帰らない弟を捜しにいくと言いだして、彼らも同行する。好奇心旺盛な6人旅の始まりである。

 ところが、マティアスの弟が残した手書き地図を頼りに出かけると、なぜかマヤ人に周囲を囲まれて、彼らは退路を絶たれる。

 ギリシャ人のパブロが穴に落ちて背中に重傷を負うのを筆頭に、こうして次々に災禍が襲ってくる。やがて手持ちの食料も水も尽きかけてくる。はたして彼らは無事にその窮地から脱出することができるかどうか−という話だ。それだけの話といってもいい。

 マヤ人はなぜ彼らの退路を絶つのか。パブロはなぜ穴に落ちたのか。そういう一つ一つのことにすべて何者かの意思が働いていて、つまり彼らを襲ってくるものの正体が途中で明らかになるのだが、こう言ってよければそれは珍しいものではない。

 だから、正体が明らかになってもそれほど驚かない。これは、そういう驚くタイプの小説ではない。にもかかわらず、読み始めるとやめられないのだ。

 それは細部のディテールが群を抜いて鮮やかだからだ。じわじわと恐怖が効いてくるのはそのためにほかならない。

 『シンプル・プラン』のような派手な展開をする小説ではないが、こういう地味な小説こそ作者の手腕が問われるもので、ここまで読ませるのだから、まったくうまい。スコット・スミスがただの一発屋ではなかったことを証明する一冊といってもいい。緊迫したホラー小説の傑作として読まれたい。

 Scott Smith 米ニュージャージー州サミット生まれ。27歳で『シンプル・プラン』を発表し大ベストセラーに。本書は2作目。

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