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【週末読む、観る】(5)『のぼうの城』「弱者の誇り」描く時代小説 (2/4ページ)

2008.4.27 09:31
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 ■『路傍』東山彰良著(集英社・1785円)評・池上冬樹(文芸評論家)

《荒野を切り開く青春ノベル》

 学も金も仕事もない若者たちの、いきあたりばったりの暴走の日々を描いている。五木寛之の『青年は荒野をめざす』やジャック・ケルアックの『オン・ザ・ロード』を思いだす人もいるのではないか。いわゆる青春ロード・ノヴェルだ。

 といっても、最初から最後まで千葉・船橋を拠点にして房総半島を出ない。にもかかわらず、ここには疾走感があり、青春という荒野を旅している真摯(しんし)さがある。いかにも現代らしくチープで、ばかばかしくて、きわめて悲惨な笑いに包まれた冒険譚であるけれど、でもそこには青春を生きる若者たちの真正な輝きがある。

 主人公は28歳の「俺」と喜彦。酔いつぶれたサラリーマンの財布をくすね、ドラッグを横取りし、密輸された爬虫(はちゅう)類を売り、金持ちたちの変態セックスショーのおぜん立てをし、そして北朝鮮からの密航者を運んだりしている。当然その過程は危険で、やくざから脅されたり、新興宗教団から命を狙われたりする。だが、“ポケットに入っているものといえば破滅だけで、それをもとでに勝負に出るしかない”とばかりに、ここぞというときは腹を括(くく)って逆襲に出るのだ(もちろんすごすごと逃げ帰るときもあるが)。

 面白いのは、路上を生き抜く哲学があちこちで開陳されることだ。“人生はタクシーに乗っているようなもので、ぜんぜん進まなくたって金だけはかかる。ただじっとすわっているだけで、一分一秒ごとにメーターはどんどん跳ね上がっていく”“人は愛があるからセックスをするのではない。足りない愛を埋め合わせるためにするのだ”などと暴走の合間に箴言(しんげん)を繰り出してなんとも格好いい。

 賑々(にぎにぎ)しく戯画化されたキャラクターたちの競演、脱力する俗悪な挿話の数々、クレージーな笑いに包まれたオフビートな展開と実に楽しい。箴言をきらめかせ、徹底的に俗悪と戯れつつ荒野を切り開いていく手際も逞(たくま)しい。新世紀を代表する青春小説の傑作だろう。

 ひがしやま・あきら 昭和43年生まれ。著書に『ワイルド・サイドを歩け』など。

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