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【週末読む、観る】(4)あさのあつこ・お父さんも来るサイン会 (4/4ページ)
【児童書】『漂泊の王の伝説』ラウラ・ガジェゴ・ガルシア作、松下直弘訳(偕成社・1575円)
評・三辺律子(翻訳家)
《砂漠の風感じるファンタジー》
風景はその土地の人々にさまざまな想像をもたらす。奥深い緑の森は妖精を、火を噴く火山は竜を、不気味な沼は妖怪を、そして漠々たる砂漠はジン(精霊)を。
「どんな道のかたすみにも」ジンたちがいたアラビアのジャーヒリーヤ(無知の時代)、誕生の時ジンに触れられたと評判の王子ワリードは、姿も心も美しく、知恵と力に恵まれた非の打ちどころのない若者だった。すべてを手にしたかに見えるワリードだが、彼には心に秘めた野望があった。それは、世界中の詩人が己のカスィーダ(長詩)を競うウカーズのコンクールで優勝すること。彼は、優れた詩人でもあったのだ。しかし、彼の夢は打ち砕かれる。それも、貧しい絨毯(じゅうたん)織りに。
自分の寛大さや公平さは、恵まれた者ゆえの余裕に過ぎなかったことを突きつけられ、ワリードの心は徐々に醜さにむしばまれていく。そしてその醜さが生み出したこの世のものならぬ絨毯のために、砂漠をさまよう盗賊から、オアシスで生きる遊牧民、そして隊商を組み砂漠を渡る商人へと、自らの運命を二転三転させることになるのだ。
砂漠を背景にした壮大な物語に、灼熱(しゃくねつ)の風や、ラクダの集うオアシス、三日月刀を振りかざす盗賊、そして何より人知を超えた存在であるジンの描写が得も言われぬ魅力を添える。ジンは、旅人を助けることもあれば自滅へ追い込むこともある、気まぐれな存在だ。ワリード自身、ジンに魅入られたことがいいのか悪いのか、判断できない。そうした神秘的存在が、アラビアの風景と相まって、善悪を対立的に描くことの多い西欧的ファンタジー世界とはまた違う味わいを醸す。そう、確かに砂漠の風を感じるのだ。
Laura・G・Garcia スペインの作家。バレンシア大学で学びながら、21歳のときに『この世の終わり』でデビュー。